リースは学校のどこを走っているのかわからなくなっていた。 それだけ夢中に走っていたのである。 「なんで私あんなこといっちゃったんだろ」 パートナーというのは、人間界とサンタ・クロウスでは意味が似ているようで似ていない。 人間界では仕事としてのパートナーだったり、 人生としてのパートナーだったり、 サンタ・クロウスでは、人生としてのパートナーという意味しかないのである。 そして、人間界では16歳で結婚を認められている。 男女ともである。 人間界のパートナーという事もリースは知っているのだが、 それでもリースは結婚を考えてしまっていた。 「リース、どこまで行くのかと思ったよ」 ファルが追いついてきた。 「ごめん、ファル」 「いいけどさ、なぁリース。パートナーになってくれ」 「え!?」 「さっきは変な風にしか言えなかったけど、俺は本気だ」 リースは俯いてしまった。 「なんのパートナーよ」 「戦うためのパートナーだよ。俺はお前を守り、お前は俺を守る」 パートナーの合言葉だった。 誰が決めたのかわからない。けど全てのパートナー同士はこれを誓いの言葉とする。 「私はあなたを守り、あなたは私を守る」 ファルがリーズに手を差し出す。 「よろしくな」 「ええ、よろしく」 ようやくリースに笑顔が戻った。
ビーーーー!!!!!!!
いきなり警報が鳴り出す。
『学校内に残っている生徒は至急体育館へ集合せよ。繰り返す、 学校内に残っている生徒は至急体育館へ集合せよ。 学校内にクロス出現の可能性あり。』
クロスが学校に出現したかも知れないとの放送が流れた。 ファルとリースは急いで体育館に向かう。 科学室から悲鳴があがる。 「大丈夫か!!?」 ファルが勢いよく科学室の扉をぶち破った。 科学室の中は女の子が一人座り込んでいた。 そしてその女の子の正面にはクロスがいた。 「ちっ!!リース!!ロナを頼む、クロスは俺引き受ける」 「了解、気をつけてね」 ファルは重大なことに気が付いた。 武器の出し方がわからない。あのときは自然に具現化したが、自分で出すときはどうするのかわからなかったのだ。 「どうすれば出て来るんだよ」 『汝といると楽しいのう。暇しなくてすむ』 「また出やがったな。なんだっけ、スレイ・・・コング!!」 『スレイコールじゃ!!そんな変な名前ではない。汝、槍の出し方がわからぬようじゃの』 「教えてくれんのか、ありがたい」 『教えようか教えまいか、どうしようか』 「うわ!?いじめ?いじめなのか」 『仕方ないのう、後で肩たたきじゃな』 「意外と地味な要求だな」 『失礼な、最近肩がこって大変なのじゃ』 「いいから早く教えろ!!」 『我の名前を呼ぶだけじゃ』 「簡単じゃねぇか!!」 『後で肩たたきじゃからな』 「すぐ終わらしてやるぜ、スレイコーーーーング」 もちろん指輪に反応はなかった。 それにスレイコールと会話しているときは時が止まっていたのである。 「あのくそばばぁ嘘つきやがったな」 クロスが襲ってくる。 今回のクロスはウルフだった。動きがとても早い。 必死に科学室の中を逃げ回る、ファル。 「ご主人様!!」 聞き覚えのある声。 クラスの担任の先生だった。 「ヘレン助けてくれ、指輪の使い方がわからない」 「スレイコールと呼びなさい!!」 「スレイコングじゃなかったか・・・」 そういってるときにもクロスは襲ってくる。 クロスの爪が右足を直撃する。 「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 それでも動きを止めたら殺されてしまう。 「スレイコーーーーール!!」 指輪が青く輝いた。 クロスはその光に反応して後ろへ下がった。 ファルの両手には槍が握られていた。 スレイコールの槍。 「すぐ終わらせてやるぜ!!」 ファルはクロスに向かって走る出す。 大きく振りかぶる。 クロスが突進してくる。どちらが早いのか。 「はぁぁ!!」 「がうぅぅぅ!!」 ファルの左肩から血が出てきた。 クロスはというと、淡く光ってどこか消えてしまったのだった。 ファルが勝利したのだ。危ない戦いだった。 「ファル様、あなたは指輪の使い方も知らなかったのね。私が教えておくべきだった」 「ヘレン、勝ったよ・・・」 そういって、ファルは気絶した。 ファルが気絶したと同時に校内に放送が流れる。
『学校内のクロスは駆除された。 体育館避難体制を解く。 学校内に残っている生徒は速やかに下校するように。』
放送がかかってからちょっとするとリースが科学室にやってきた。 「ファル!!ヘレン、ファルは大丈夫なんですか?」 「大丈夫よ。気絶しているだけだわ。けどこのままじゃちょっと危ないかもね」 「そんな、ファルが死んだら、私・・・ってヘレン、こんなことしてる場合じゃないでしょ!!病院に連れていかなきゃ!!」 「そうしたいのは山々なんだけど、ここまで傷が深いと医者には治せないのよ」 「じゃあファルは死んでしまうんですか!?」 「それは絶対にさせないわ。ヒーリングの能力をもつ知り合いをよんだわ。後はそれにまかせるしかないわね」 リースはファルの手を握っていた。 「ファル、絶対死なないでね。私はファルのパートナーなんだから。こんな早くパートナーを失うなんて私はやだよ」 リースの想いに指輪は答える。指輪が輝きだした。 『やれやれ、ここでくたばってしまっても困るのですよ、汝の代わりなんてそんな簡単に見つかりはしないのですよ』 「この声は、スレイコール様!?」 『いかにも我の名はスレイコール、そこに私の家系の娘がおるだろう』 「私のことでしょうか」 ヘレンは緊張していた。 『そんなに緊張しなくてもよい。その少年を助けたいのだろう、我が助けよう。今回は特別じゃ』 ファルの指輪がもっと輝いた。 輝きが収まるとそこには、青い髪、青い瞳、青いローブを着ている少女が現れた。 「ふう、この姿も何年ぶりかの」 「スレイ・・・コール様?」 「そうじゃの。我がスレイコールじゃ」 「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!???????」 ヘレンとリースは二人して驚いた。 女神とあがめていたものがこんな少女だったのである。 しかし、美しさはこの世界のものとは思えなかった。 「早速、治してしまおうかの」 そういうと、スレイコールはファルの目の前にいった。 手を額に当てる。そして中指を親指で力を蓄える。 いわゆる、デコピンの体勢。 「さっさと起きんかい!!」 スレイコールのデコピンが放たれた。
ズガン!!!
この世のものとは思えないような音が科学室に響く。 ファルは地面に軽く埋まっていた。 「スレイコール様?今ので大丈夫なんでしょうか?」 「もちろん大丈夫じゃ」 「よかった。ファルがこれで」 「そうじゃの。さて我はこのままこの世界にとどまろうかの」 ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!??????? ヘレン、リースの声が見事にそろった。 「別によいではないか。我も見たくなった。今の世界を。それにファルに肩たたきをしてもらわなくてはならないからの」 そんな驚きがあってもそのときの事はファルは一切しらないのである。 「そうそう、ファルの家に世話になるからの」 ファルが起きたら大変になるだろうと、リースは切実に思っていた。
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