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作品名:サンタ・クロウス 作者:みあきす

第3回   スレイコールの子孫
カ〜ン!カ〜ン!

今日の授業がすべて終わった。
「ふぅ、助かった」
ファルは授業を体調が悪いという事ですべて見学していた。
「ファル、よかったわね」
「一度手袋を外さなきゃならなかったけど見られてはいないようだった」
一度作業で手袋を外さなきゃならなかったのだがそれは大丈夫だったようだ。
「一緒に帰りましょ、ファル。一人だと心配だから」
「またお前のファンに追っかけられそうだ」
休み時間の間に何回かリースのファンに追っかけられていた。
そのため休み時間になると隠れるのだ。
「休み時間にいなくなるのはそのせいだったのね」
「誰のせいだよ」
「私のせいだとでも言う気なの?」
「いえ、滅相もございません」
なぜかリースにだけは逆らえないファルだった。
帰る準備をして帰ろうとすると先生が教室に入ってきた。
ファル達の担任は若い女の先生で、リースが言うにはサンタクラスの伝説の人だとか。
まだまだ若いその先生は指輪を三つ程つけていた。
「ファー君、リーちゃん。ちょっと話があるんだけどいいかな」
まずい、とファルは心の中で思った。
「いいですよ、先生。私達は問題ありません。ね?ファル」
「あぁ」
ファルの心境とは裏腹にリースはそんなこと考えてもいなかった。
この先生は信用できるのだろう。
「ファル、指輪の話はこっちからしちゃだめよ」
リースは信用はしていなかった。
ここで急いでる方が怪しいと判断したまでだった。
「じゃあここでお話ししましょうか」
先生はファル達の近くに座った。
「ファー君。いえ、ファル。君が昨日のクロスを駆除したんでしょ?」
単刀直入な質問だった。
「そんな、俺にそんな力はないですよ」
まだばれてはいないと判断して嘘をつく。
「今日特防のお偉いさんが来てね。昨日クロスの存在が消えた地点を調べたところ、ファルの家だってことになってるのよ」
少し足に力を込めた。いつでも逃げられるようにだ。
「その指輪の事も気になるしね」
指輪の事もばれていた。
「わからないとでも思った?」
返事はしない。
「ここの先生全員気づいているわよ」
さすがに動揺を隠せない。
「どうして気づかない振りを?」
「あら、やっぱり指輪をしているのね」
騙された。つい喋ってしまった。
「指輪見せて御覧なさい」
「いいですよ」
リースはもう駄目だという顔をしていた。
ファルは手袋を外す。
指輪を見た瞬間先生の表情が変わった。
「これはスレイコールの指輪!?」
さすがに先生は見ただけでわかった。
「先生も知ってるんですか?」
「当たり前よ。私はこれでもスレイコール様の子孫よ」
この言葉にはリースも反応していた。
「ヘレンさんってスレイコール様の子孫だったんですか!?」
「リース、先生の名前違うだろ」
先生は手でファルを制した。
「あら、よく私の本名を知ってるわね。あなたはサンタクラスの子かしら」
「そうです。まだ今では三人しか残っていない51期卒業生です」
「だからあんなに成績が優秀なのね。他の人が勝てない理由がわかったわ」
ファルは二人の会話についていけなかった。
「それはそうと、その指輪返してもらえないかしら」
二人に緊張が走った。
実力行使でこられたら勝ち目なんてあるはずがない。
「嫌です。と、言ったら?」
「奪うしかないわね」
「正直にいいます。外せないんです、この指輪」
ヘレンは驚きの表情をしていた。
「あなた、もしかしてスレイコール様と会話したの?」
「あの声の持ち主がそうだったのなら、してます」
ヘレンは少し考えるようにしてとてつもないことを言った。
「じゃあ私を部下にしなさい。私はスレイコール様の力のそばにいたいの。最初はその力を自分で使いたかったけど、スレイコール様がファル様を選んだのでは仕方ありません」
なんかもう部下の気分で話していた。
「ファル様って・・・」
少し気分がいい。いやとても気分がいい。
リースが反抗する。
「ちょっとヘレンさん、先生が部下だなんて」
「いいじゃない。学校ではうまくやるわよ」
「そういう問題じゃ」
リースの言葉はヘレンの言葉でさえぎられた。
「クロスの力が強くなってきているのは確か。その証拠に51期卒業生はもう三人しか残ってはいない。その後の卒業生は一人残ってるかどうか。だから私達は今までのように個人で戦うわけにはいかないのよ。」
ヘレンの言うとおりだった。最近はクロスの質が上がってきている。
助け合わないとそのうちクロスに皆やられてしまう。
「わかりました。先生。いいでしょう、あなたが望むなら部下になってください」
ヘレンと目が合う。ファルは復讐する前に死ぬのはできないのだ。
「わかりました、ご主人様」
「ってヘレンさん!?部下じゃなくなってません?それでは従僕かなにかです」
「そういう話ではなかったかしら?」
そのご主人様はご主人様と呼ばれどこかに舞い上がっていた。
「ちょっとファル!!」
リースの言葉で我に帰るファル。
「先生、それはやりすぎなんじゃ」
「先生ではありません、ご主人様。ヘレンとお呼びください。それが嫌でしたら、レンちゃんと呼んでください」
少しへレンが顔を赤らめた。可愛い。
綺麗だけではなくこんな一面もあるとは。しかし、
「ヘレンと呼ばせてもらいます」
ちょっと残念な顔をしたヘレンが頷く。
「話はこれだけよ。それと上級生の先生には気をつけなさい。クロスに味方する組織の一員がいるから」
今までのヘレンはふざけていただけだった。
リースは安心していたが、ファルは少し残念そうな顔をしていた。
それをリースに見られ頭を小突かれる。
「わかりました。ヘレンさん」
「リース、ヘレンと呼びなさい。もう先輩と後輩ではないの」
「はい、ヘレン」
「ファル、あなたの成績は優秀だから目立っているのよ。これ以上目立たないようにしなさい」
「わかったよ、ヘレン」
そう返事をするとヘレンは嬉しそうに教室を後にした。
「ふぅ、緊張したぜ」
「何よ、へらへらしてたくせに」
リースが少し不機嫌になっていた。
「仲間かぁ」
「ファルだけの部下でしょ」
リースの言葉が少し重い。
「じゃあリースも俺の部下になるか?」
「ファルの部下なんてごめんだわ」
「じゃあ俺のパートナーとか」
その言葉でリースは激しく動揺した。
顔が真っ赤になってきている。
「なんでファルとなんか・・・けどファルがどうしてもって」
「やっぱりだめだよなぁ、リースにはもっといいパートナーが見つかるよな」
リースがいきなり立ち上がった。
「もういい、私はファルがいいの!!ファルがパートナーじゃなきゃ駄目なの!!」
そう叫んで教室から出て行った。
取り残されたファル。
「う〜ん。今のはオッケーっていう事だよな」
そしてすぐにリースを追いかけた。


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