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作品名:サンタ・クロウス 作者:みあきす

第2回   リースの過去
「どういう事だ?」
頭が全く追いついていなかった。それでも、リースの説明は続く。
「私が生まれたのは、この人間界の上にある、サンタ・クロウスという国よ。
その国では選ばれた子供はある施設に連れて行くのよ。
私は選ばれた子供だった。そこでは色々な事をしたわ。
今の学校より厳しいことを毎日毎日繰り返してた。二年経つとクラスが分かれるの。
サンタクラスとクロウスクラス。私はサンタクラスだった。
そこでずっと疑問に思っていたことがあったのよ。
クロウスクラスに行った友達と会えないこと、そしてどこで何をしているのかもわからなかった。三年が経つと今度は人間界に送られるのよ。
クロスを駆除するための任務を背負って」
ファルは全く理解できていなかった。とりあえず、リースは人間ではなくて、上の国からやってきたこと。そしてクロスを駆除するための訓練を小さい頃からやらされていたこと。
「それじゃあリースのあの学校の成績は小さい頃から訓練してたおかげなんだな」
「そうね。けど、コモンズ、チーノも才能あるわよ。あなたと比べたら可哀想だけど。あのレベルだと特殊防衛軍で活躍できるレベルね。他の子は普通ぐらい」
「そんなものなのか」
リースがファルの手をじっと見る。
「ファル!?その指輪どこで手に入れたの!?」
急に大きい声を出すことがないリースが興奮気味に大きい声を出した。
「妹がくれた石の中に入ってた。クロスに襲われたときに青く光って砕けたんだ。そしたらこの指輪が出てきて」
リースは少し考えるようにしていた。
「なるほど。すべてわかったわ。今回のクロスはファルが駆除したのね。その指輪の力をつかって。指輪に選ばれるなんてファルはすごい才能なのね」
またまたリースの言っていることがよくわからなかった。
「まぁリースの隠してる必要はないな。今回のクロスは俺が確かに駆除した。この指輪がいきなり話しかけてきたんだよ」
「話しかけてきた?指輪が?そんなわけ・・・ファル・・・あなたのその指輪とてつもないほどの代物かもよ。世界に五つしかないと言われている女神の指輪。青く光ったという事は水を司る女神・スレイコール様の指輪だわ。こんな物を拝めるなんて・・・じゅる」
「じゅるってなんだよ!じゅるって!!けどこんなにすごいものだったんだな。セリスも一緒に戦いたかったのかな」
「セリスって誰よ」
「妹さ。クロスにバラバラにされちまった」
「ごめん」
「いいよ。この話すんのはリースが初めてだな」
「ごめん」
「だからいいって」
「ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!もういいって言ってるだろ」
「怒った?」
「怒った」
「やった!!私の勝ち」
そういうとリースは逃げた。
「何が勝ちだ!!こらまてリースにげんじゃねぇ」

次の日。
リースには学校には指輪をしてこないようにと言われていたが、指輪ははずせなかった。
指輪がばれないように手袋をしている。
ちょうど寒くなってきた時期なので違和感は感じない。
ファル以外にも手袋をしている学生は沢山いた。
周りをキョロキョロと観察していると後ろから話しかけられた。
「ファル、おはよう」
リースだ。
「よう、リース」
「指輪はずしてきたでしょうね」
リースが密着してきたので緊張が走る。
恥ずかしいとかではない、それは少しあるかもしれないが。
リースは学校の人気者なのだ。
容姿端麗で勉強も運動も出来るみんなのアイドルなのだ。
それが学校の外でこんな目立つ場所で密着されたら、後で何が起こるかわからない。
「ちょっと離れろよ、リース」
手で押し離す。
「いいじゃない、寒いんだし」
負けまいとリースがファルに密着しようとする。
その行為がいけなかった。
リースのファンからとてつもなく恐ろしい目線が。
「やばいぞリース。俺は今日死ぬかもしれない」
「何いってんのよ。ファルが死ぬわけないじゃない」
そんなことを軽々しく言えるこいつは自分の事を知らないのかもしれない。
「お前とこんな密着してるとこをお前のファンが見てたら俺は殺される」
「なぁんだそんなことか。大丈夫ばっちし見てるから。あそこに一人でしょ。あの影に三人。そして校門に二十人ぐらいかな」
リースは登校時のファンの数を把握していた。
「そうか、そしたら俺はそのファンに殺されるんだな」
「大丈夫よ。あんなやつらなんかに私のファルが負けてたまるもんですか」
「いつからお前の俺になったんだ?」
「小さい頃からの約束だったじゃない」
そんなことを笑顔で言ってくる。
ちょっと前だったらそうだったのかと信じるかもしれない。
だが、
「お前小さい頃は空の上にいたんだよな?どうやって約束するんだ?」
まずい、といった顔をしたリースが苦し紛れに返答する。
「夢よ・・・そう夢。ファルとは小さい頃に夢で会ってるのよ」
「そんな妄想はいいから、あのファンどうにかしてくれないか?」
「これは本当なのに・・・」
「え?何か言ったか?」
「ううん、なんでもない」
どうしようか本気で考え出したファルを見てリースは本気でどうにかしようとして作戦を提案した。
「もういっそ手繋いで学校行っちゃう?」
ファルは何言ってんだこいつ、というような顔でリースの顔を見る。
「いい案じゃない。行きましょう行きましょう」
無理やり手を繋いで歩き出した。
意外に力があり、離せない。
「あきらめるしかないのか」
「なんかいった?」
「滅相もございません。お繋ぎ出来て光栄です」
よしよしといわんばかりの笑顔だった。
「指輪外せなかったんでしょ。だから今日は手袋をしている」
「そうだよ。お前が見られないほうがいいっていったからな」
「そうね。学校じゃ手袋はずさなきゃいけないわよ」
「それはどうしようか考えてた。ポケットに手を入れておけば大丈夫なんじゃないかとか、けど実技になったらどうしようもないとか」
「じゃあ今日は授業は見学してなさいよ、先生に絶対見られちゃだめよ」
「どうしてだ?」
「ここの先生って実はほとんどが、サンタクラスの人なの。だから私の事ももちろん知ってるし。指輪もレベルの低い物だけど全員持ってるわ」
先生達がしていた指輪はこの指輪だったのか。
先生のほとんどがサンタクラスの人間なんてすごい話だと思っていた。
特殊防衛軍が戦うよりこの学校の先生が戦うほうが強いんじゃないかという事を思いついてしまった。
「なぁリース、特防よりこの学校の先生のほうが強いんじゃないか?」
「そうね。けど先生達結構戦ってるわよ」
結構戦っているらしかった。
「ファルが見たこと無いだけ」
多分この学校の学生はほとんどみたことないだろう。
あるのは上級生の数名ぐらいだろう。
「リースのようなやつは他に何人人間界に来てるんだ?」
「最初は20人いたわよ」
「最初はってことは、逃げたのか?」
「そんなわけないでしょ、まだ成長しきってないうちにクロスに殺されたのよ」
「わりぃ」
「気にしないで。弱いのが悪い、それがサンタクラスの掟。だから施設では強い者が権力をもっていた」
「そんなもんか」
「けど、私が一緒にいたら殺させはしない。絶対守ってみせる」
ファルはそんなリースが好きだった。
仲間を思いやるリースはすごい思う。
ファルは自分には敵討ちしかないと考えていた。
「なぁリース。校門に沢山人が集まってないか?」
「何かあったんだわ。行きましょ」
ファルとリースが近くまで近づくと、鬼の形相をした学生がファルを睨んでいる。
この人の集団はリースのファンクラブだった。
ファルは逃げた。リースをおいてくわけにもいかないので手を繋いだまま走る。
しかし、手を繋いだままじゃ逃げ切れないと判断したファルはリースをお姫様のように抱っこして学校の壁をジャンプして飛び越えた。
追いかけていた学生はそれが異常だという事に興奮状態で気づかなかった。
「ファル、あんた今壁ジャンプで」
「よくわからないが出来る気がしたんだ」
「サンタクラスの異能者だったらわかるけど」
「指輪のおかげなんじゃねぇか?」
「そうね。行きましょ。今度は腕を組みましょ」
「まだ懲りてねぇのか」
そんな二人を学校の窓から見ている上級生が一人いた。
ジェフという名の上級生で一番駄目だと言われている上級生だった。
その指には赤い指輪がはまっていた。


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