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作品名:サンタ・クロウス 作者:みあきす

第11回   襲来
リビングに現在の戦力が集まっていた。
リースとジェフ以外眠いと愚痴をこぼしていた。
その原因は朝のリースにあるのだが。
「みんな今日クロウスが襲ってくるのよ!元気出さないでどうするのよ」
みんなの元気を出させようと頑張るリースだが、原因を作った当本人なだけにみんなの視線は痛いようでそれ以上言えなくなった。
「けどリースの言うとおりだな。いつでも戦える準備をしておかないと全滅ってことも考えられなくはないわね」
眠そうな表情を必死に隠してるせいか少し変な表情をしてセリスは言う。
「とりあえず、学校に行かなきゃいけないな」
今日は平日でファル達の通っている学校は欠席は余程の事がない限り欠席してはいけないのである。
「その間は私達が警戒しているから大丈夫よ」
座りながら寝ているフェイを指差すセリス。
「本当に大丈夫なんだろうな」
大丈夫なんだろうが念のために聞き返してしまう。
一人は問題無さそうだがもう一人は問題がありそうだからだ。
「大丈夫よ。ファーダムさんは朝に弱いのよ。戦いになれば一番頼れるのはファーダムさんなんだから」
それもそうだ。
一番の年長者であるこの人が一番頼りになるのだ。
セリスもそれほどかわらないのだけれど。
「じゃあ、学校に行ってくる、家を出るときはちゃんと鍵を閉めてから出ろよ」
もう限界だというような感じに手を振って見送るセリス。
「本当に大丈夫かよ、この二人」
そういい残し家をあとにするファルだった。


学校ではリースと同じクラスで、最近あまり関わることがないコモンズやチーノも一緒。
ジェフは上級生で学校ではほとんど顔を合わせない。
それに今はクラスの人とも顔を合わせる時間はほとんどなかった。
朝と帰りだけ顔を合わせていた。
その原因は担任のヘレンから上級生よりも高度な授業を受けているからであった。
以前のクロスとの戦いで今のままでは戦えないと思い知ったファルとリースのために行われている授業である。

天蘇の扱い方

それが特別な授業だった。
今は身体の中の天蘇が目覚めたのでその扱いをやっている最中だった。
しかし、上級生でもほとんど出来ない部分も二人は簡単に習得していた。
そして今は天衣という技の授業中。
「ヘレン、この天蘇を武器に纏わせるってこんなのでいいのか」
ファルは先ほどヘレンに教えてもらったばかりの天蘇を武器に纏わせる技術をもう使いこなしていた。
「その通りです。しかし、本当に早いわね。これじゃこの学校でやる授業すべてをものにしてしまうわね」
授業は一応やるのだが上級生は結局出来ずに卒業していくのである。
極稀に習得して卒業していく生徒はいるのだが、そんな生徒は特防のトップになるような人材だけである。
今の特防の人物もこの学校の人で天衣を習得して卒業した一人だ。
「でもヘレン、天蘇で出した武器に天衣する必要はあるのか」
「そうね、いい質問ね。天蘇で出した武器は普通の武器とは変わりのないものなのです。天蘇がその形をなすために身体から放出されているのです。その形を維持するのに天蘇は精一杯なのです。だから攻撃としての力は出せないのです。それにもし、出せたとしても武器はその形を維持できないでしょう」
ファルはわかったようなわからないような表情をする。
そして何かわかったかのように口を開く。
「とりあえず、天蘇ってのは一度身体から出したら別の生き物になるって思ってもいいのかな」
ファルの回答にヘレンは少し考える。
「そうね。ファル様にしては上出来かもしれないわね」
馬鹿にされたのに気づかずに喜ぶファル。
その横では天衣に苦戦しているリースの姿があった。
「武器に稲妻を走らせるイメージ・・・イメージ」
ちょっと斧に電気が走っただけでそれ以外の変化は起こらなかった。
天衣がうまく出来ると武器が淡く光るのだ。
「うわぁ。出来ない」
武器を維持する集中力も切れてしまい斧は光の粒となり消滅した。
「リース。武器を別の固体と思ってたらだめだよ。武器は身体の一部って考えるんだ。身体には天蘇がうまく纏うことが出来たんだからそれで出来ないはずはないよ。ちょっと休憩して頑張ってみようよ」
落ち込んでいるリースにファルは助言をかける。
「ファル様、リース。今日の授業はこれで終わりです」
「どうしてなんですか」
まだ学校が終わるには早い時間だった。
「あら、ファル様もリースも駄目ですわね。今日は早く授業が終わるって昨日言ったではないですか」
ファルもリースも首をかしげている。
ヘレンは厭きれる気持ちでいっぱいだった。
『本当にこの子達にこの世界の命運がかかっているのかした。そうだとしたら不安でいっぱいだわ』
そんなことを思いつつ教室に戻る準備を始めるとついでに一言。
「それに今日はクロウスが襲ってくるのですよ。その前に力を消費尽くしたらどうするのですか」
そうだ、今日は昨日襲ってきたクロウスがまたやってくるのだった。
思い出した二人は顔が引き締まった。
そして、二人は教室へと戻っていったのだった。


「皆さん、気をつけて帰るのよ」
元気に返事をしてヘレンのクラスの生徒は教室から出て行く。
ファルとリースはまだ教室でゆっくりしていた。
セリスとフェイからはまだ連絡は入っていないので大丈夫だと思ってゆっくりしているのである。
不満を言っていたファルだがセリスのことは信頼していた。
教室でのんびりしているとジェフが教室に入ってきた。
「ファル、一緒に帰ろう」
「まだ教室でゆっくりしてようぜ。帰るとフェイの我侭に付き合わなきゃいけないからさ」
「そうね。今はゆっくりしましょう。これから用事もあるんだし」
教室でゆっくりするという方向で決まった三人は外を眺めながらくつろいでいた。
そこにコモンズとチーノが現れる。
「お前ら最近付き合い悪くないか」
「ごめんな。コモンズ、チーノ。ちょっと野暮用でさ」
「毎日野暮用かよ。今日は用がないからのんびりしてるんだろ、だったら遊びに行かないか」
ファルは毎回コモンズ達の誘いを断るのが苦痛になってきていた。
大事な友達をだましているのだ。
本当は野暮用なんかではなくこの世界を救うために戦っているなんてことはコモンズとチーノには言えない。
言うべきなのかも知れないが、コモンズとチーノを巻き込みたくはなかった。
そんなことを考えていると頭の中に声が響いた。
『ファル!クロウスが現れたわ。けど特防といったかしら、とにかくその人達はまだ気づいてないみたい。だから人の少ないところに誘導する必要があるわ』
「リース、ジェフ。今の・・・」
二人はファルを見て頷く。
「ごめん、コモンズ。用が出来た」
「ちょっと、おい待てよ。おい、ファル」
三人は急いで教室から出て行った。
「チーノ・・・追うぞ」
「えぇぇ。追うんですか」
「早くしろ。グズグズしてたら見失っちまう」
二人も三人を追って教室を出て行った。


『ファル。学校に誘導することにしたから学校に向かって』
『セリス、それってまじですか』
『おおマジよ。今確認したら学校を確認したら十人いるかどうかだから大丈夫よ』
『そうだな。その十人に俺達も含まれているわけだ』
『今学校にいるのね。なら話が早いわ。学校で一番広い場所に移動して』
『わかった』

「リース、ジェフ。グランドだ。グランドに向かうぞ」
「よし」
「わかったわ」
グランドにはすぐ到着した。この学校に通っているんだグランドの位置ぐらいちゃんとわかっている。
セリス達が到着する前に心拍数が上がる心臓落ち着かせようと努力しているファルとリースだがどんどん心拍数が上がっているらしくすぐに戦える状態とはいえなかった。
「ファル、リース。そんなに緊張することないぞ」
今更緊張してもどうしようもないのだが。
ジェフのおかげで少し緊張がほぐれたのか二人は落ち着いてきていた。
そこにその元凶が現れた。

「人生最後の一日は楽しめたかい」

ゆっくりとグランドに降り立ってくる。
「それはこっちのセリフだ」
「まだヘレンはいないみたいだね。まぁいいか、君達じゃ話にならないんだよな」
「やってみなきゃわからないわよ」
ガンドという元凶は悪という感じが完璧に出ている表情をしていた。
「それじゃこれは挨拶代わりだ」
両手に黒い玉を発生させる。
ボーリングの玉ぐらいの黒い玉がファル達に向かって投げられる。
「死になああああああああああああああああ」


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