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作品名:サンタ・クロウス 作者:みあきす

第1回   大きな力
『ミルゲン区の住民に警告。ミルゲン区においてクロスが発生。住民は無闇に家から出ないように。ミルゲン区にいる特殊防衛軍隊員は臨戦態勢に移行せよ。繰り返し・・・』

ミルゲン区内のとある少年の部屋ではラジオから警告が流れていた。
「またクロスが出たのかよ。今日も遊びにいけねえじゃん。今日はコモンズ達と約束してたってのによ」
クロスというのは魔物とも呼ばれていた。生き物に似ているようでどこかが違う。
時には人間のようなクロスもいるのだ。
この国にはそのクロスに対抗するために作られた特殊防衛軍というのがある。
クロスに抵抗するための武器を開発し、その武器でクロスを駆除するのだ。
安心できるほどの完成度ではなかった。
「早く特防が駆除してくんねぇかな」
早く駆除されればすぐ遊べるのにという意味である。電話が鳴る。
「もしもし」
「おう、ファル。俺だコモンズだ」
「どうした?」
「今日のあれは中止にしようぜ」
「なんで!?特防がすぐやってくれるって」
「違うのさ。クロスを見に行かないか?」
「それは危険だぜ、コモンズ」
「まさか、びびってんのか?」
「まさか」
「じゃあ、みんなでお前の家に行くからな」
「ちょっとまてよ」
ツーツーツー
電話を切られた。ファルと呼ばれた少年は親がいないことを確認した。いつも親はいない、けどたまに帰ってくることもあった。そんな時も連絡一つもよこさずいきなり帰ってくる。息子が住んでる区に危険があっても電話もこない。ファルの両親はミルゲン区から北に向かって二つぐらい区を越えたところにあるサージオ区で仕事をしていた。
ファルは一応外に出る準備だけはしておいた。本当にコモンズ達が来てもいいように。
カバンの中に必要と思えるものをすべて詰め込んだ。それで結構カバンはパンパンになってしまっていた。
「おっとこいつはカバンじゃなくてポケットだな」
ファルがポケットに入れたのは今は亡き妹がどこかで拾ってきた石だった。
とても綺麗でファルの宝物だった。
ファルの妹はクロスに殺されたのだ。
人型のクロスに。妹はクロスだと疑わずそのクロスに近づいた、一瞬だった。
一瞬で妹の体はバラバラになってしまった。
「クロスのやろう!!」
クロスに仕返ししたいという憎しみと自分じゃ何も出来ない悔しさがファルを苦しめた。
それはファルだけじゃない。ファルの両親もそれによって苦しんだ。
その結果がこれである。両親は忘れるために仕事に没頭した。
ファルは誰かがやってくれるという考えを持つようになってしまったのだった。
カンカン!
「もう来たのか」
カンカンカンカン!!!
「今行く!!」
ドアを開けるとコモンズ達がいた。
いつものメンバーのコモンズ、チーノ、リースだった。
「早く入れよ」
そういうと無言でコモンズ達はファルの家に入ってきた。
「どうしたお前達、今日は元気ないな。コモンズ、お前電話のときの威勢はどうしたんだよ」
雰囲気がいつもと違った。いつもならこんな静かなわけがない。
「お前らどうしたんだよ。なんかあったのか?」
いきなりチーノが動き出す。人間の動きじゃない。異常な動きだった。
チーノに気をとられてるうちにコモンズ、リースが消えている。
「後ろか!!?」
後ろには誰もいなかった。相変わらずチーノが変な動きをしている。明らかに腕がおかしい方に曲がっていた。
左肩にすごい衝撃が走る。
上から攻撃されたのだ。
「上からか!!」
もう左腕は使い物にならないだろう。しかし、まだここで死ぬわけにはいかない。
妹の仇をとるために。
「死ぬわけにはいかないんだよぉぉぉ!!」
すると、ポケットに入っていた石が青く輝いていた。
「なんだこれは」
『汝は力を求めるのか?』
「俺はこいつらを根絶やしにする力がほしい」
『手に入れた力を悪しき者にしか使わぬと約束できますか?』
「約束する。俺は悪をぶっ潰す!!」
『よろしいでしょう。力を受け取りなさい』
輝いていた石は砕け散った。
「なんだこれは」
砕け散った石から出てきたのは指輪だった。
はめてみるとサイズはちょうどよかった。
指輪が光となり、武器を形成していく。
槍だった。
「これが俺の力。これでクロスを倒せる」
チーノが襲ってくる。曲がる腕で変則的な攻撃を仕掛けてくるが槍の間合いの方が広い。
「たぁぁぁぁぁぁ!!」
槍を突き出す。チーノは避けきれず串刺しになってしまった。
串刺しになったチーノは淡い光となって消えていった。
「肩が治ってる」
リースとコモンズが襲ってくる。
左右から同時に攻めてくた。
ファルは槍をもって勢いよく回った。
リースとコモンズは上半身と下半身が離れた。
また二人とも淡い光となって消えていった。
安心したのか、ファルはどっと疲れが出てきていた。
気が付くと槍は指輪に戻っていた。
とりあえずこのぐちゃぐちゃになった家をどうにかしなければならない。
それとコモンズ達が心配になってきた。
カンカン!
「お〜い、ファル!!来たぞ」
ファルに緊張が走った。またクロスなのかという思いが出てきた。
「ファル!!いるんだろ?」
窓から確認すると先ほどまで戦っていた三人だった。
コモンズ、チーノ、リースである。
「ファル!!ねぇ開けてよ」
クロスだったらまた戦えば大丈夫だろうと考えドアを開ける。
「ファルおっせぇよ」
「ファルおそい」
「やぁファル」
最後にファルに遅いとも言わなかったのがリース。
学校の人気者。学校っていってもそこやそこらの学校と一緒ではなかった。
クロスについての勉強などしていた。
特殊な訓練もしているし。そこらの学生よりは戦えるだろう。
そんな勉強などしているものはほとんど特殊防衛軍に入る。
「やぁリース」
コモンズとチーノが俺たちには、とわめいた。
「派手に散らかってるわね」
「さっきクロスのやつらがきたんだよ」
なに!?と大声で反応しめす二人。チーノとコモンズ。
「大丈夫だったの?」
「なんとかな」
「もっと早くここにきとけば四人で倒せたのにな」
そんな四人いれば絶対倒せるというような自信に満ち溢れているコモンズには悪いが、今の状態では確実に四人とも死んでいただろう。
「ファル、後で話があるわ」
ファルにしか聞こえない声だった。
「わかった。とりあえず、テレビでもつけるか」
テレビをつけてわかったのは今回のクロスは三匹で動いていたこと。
いつも間にかクロスの存在が消えたこと。
特防が駆除したわけではないということだ。
それもそのはず。クロスはファルが駆除したからだ。
クロスの心配がなくなったコモンズ達はさっさと帰ってしまった。
リースだけがファルの家に残る。
「私、実は人間じゃないの」
ファルはリースの言った意味が全然わからなかった。


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