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作品名:一振りの刀 作者:みあきす

第4回  
故郷を背に武(たける)は凛(りん)と共に都へと向かって歩いていた。
村を出てから二日は経っているが着く気配はなかった。
もう体力の限界に近い、武はまだ少し余裕はあったが凛は相当疲れていた。時々ふらっとして倒れそうになるのだ。

ドサっ!!

「凛!!」

凛がついに倒れてしまったのだった。
武は凛を担いで歩きはじめる。今は都を目指すより凛を休ませるほうが先だった。

「凛、すぐ休める場所探してやるからな」

しかし、武も体力の限界だったのか意識が薄れ始めてきている。

「小屋だ!!小屋があるぞ!凛」

小屋を見つけた安心感からか、武はそこに倒れこんでしまった。
もう立ち上がれない、そこまで限界がきていたのだ。
男が近づいてくる。

「こんなところで行き倒れかよ。全く、世話の焼ける連中だ」

武と凛はその男に担がれて小屋まで運ばれた。

「じいちゃん、こいつら漂穀村の連中だぜ。なんであんなに豊かな村から出てきてるかな、俺だったら一生動かないぜ」

「こら翔(しょう)滅多にそういう事を口走るんじゃない。その二人も何らかの理由があったに違いない。最近軍が漂穀村の方へと遠征にいったらしいからの。そこで何かあったのかも知れぬ」

「それは後でこいつらから聞いておくよ」

「そうしておいてくれ」

武と凛は次の日まで目が覚めなかった。
目が覚めるとそこはどこだかわからなかった。

「ここは・・・?」

「やっと目が覚めたかい。とにかく起きて何か食べるんだな」

翔は武におにぎりを差し出す。

「ありがとう。あなたが俺達を助けてくれたんですか?」

「そうだな。お前らが小屋の近くで倒れてたんでな、放っておくのもなんだろうから拾ってきたってわけだ」

「ありがとうございます」

「礼なんかいらねぇよ。けどお前達の村に何があったのか詳しく聞かせてもらえないか?漂穀村の人間なんだろ?」

「わかりました。俺とこの子、凛は近くの森の土地神に手を出してしまったのです。その時にその土地神に凛は呪いを受けてしまい憑者になってしまったんです。」

「厄介だな」

「その土地神が役人に漂穀村に憑者がいるという報告をして。軍が派遣されたんです。凛は村人にはいないと思われていた存在ですから憑者が村にいるとは誰も思っていません。わかっていたのは俺の父ちゃんと俺と凛だけです。そして、軍が来る前の日に父ちゃんが逃げろっていってくれたんです。だから俺達は逃げてきた。途中で村から煙が出るのを見てきました。村は燃やされたんでしょう。漂穀村はなくなってしまったんです」

「そんなことがあったのか。やっぱりこの国の役人は腐ってやがるな」

翔も役人は嫌いだった。とゆうよりも翔も武と似た感情を持っていた役人に対して憎しみと怒りを。翔も両親を役人に殺されたのだった。理由はただ人を殺したかっただけという意味もわからぬ理由だった。しかし、役人に罪はなかった。それが許される国。そんなの異常だった。

「この国を変えなきゃいけないみたいだな」

武はその言葉を聞いて考えた。役人だけを殺しても今と何も変わらないだろう。また腐った違う役人が現れて新たに狂いはじめるだろう。

「翔さん。俺達と国を変えませんか?」

翔は心が踊った。自分より歳が若い少年にそんなことを言われるとは思わなかった。

「いいだろう。しかし、人数がこれだけだと全然たりないぞ」

「それはこれから見つけるのさ。拠点を見つけて軍と戦ってれば自然と仲間が集まってくるさ。不満を持ってるのは少なくはないだろう」

翔はこの少年の考えを悪くはないと思った。軍や役人をよく思ってないのは大勢いるのだ。この近隣の村で相当な数がいるだろう。

「そういえば、ここの家をご存知ですか?父ちゃんにここに行けといわれているのですが。」

翔はそれを見て愕然とした。

「ここはやめておけ。絶対行くな」

「何でですか!?」

「ここは役人の息のかかってるとこだ、行かないほうがいい。捕まるぞ」

武は希望を失ったような顔をした。それもそうだろう。生きていくためには住居が大事なのだ。自分一人なら住居なんてなくてもいいのだ。しかし、今は凛がいた。凛のために住居を見つけなければならないのだ。

「お前らもしかしてここを頼りに着たんじゃないだろうな」

「そうですけど」

「わかった。しばらく俺の小屋にいろ」

「ありがとうございます」

「しかし、家事とかは手伝ってもらうからな」

「任せてくださいよ。凛は家事が得意ですし、俺は家事から畑仕事までなんでもできますよ」

「そうかそうか、じゃぁ頼むな。それと砕けた喋り方でいいぞ、これからは仲間だからな」

「おう!!」

凛は中々目覚めなかった。その日も一日中寝ていた。
体力の限界という事もあったし、もしかしたら痣のせいという事もあるかも知れなかった。凛に関しては注意深く観察していた。
次の日になり凛は目覚めていた。武は凛に状況を説明してやった。
次の目的地を失った武達は長い期間翔の家に滞在した。
滞在している間に翔と相談して仲間を集める旅に出ることにした。
その旅には翔もついてくるという事だった。こうして武・凛・翔の三人の旅が始まった。


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