村の近くに森がある。 今日は凛と武が森に食料を採りに行っていた。 凛と武は仲良くなって今では本当の兄弟のようだった。 しかし、森で凛に悲劇が襲ったのでたった。
「凛!!あんまり奥までいくな!!」
「武!!奥のほうが沢山あるわよ!!」
「森の奥は父ちゃんがあぶねぇから行くなって言われてんだ」
「ちょっとくらい大丈夫でしょ。行きましょう」
武は全然乗り気じゃなかったが凛が先に一人で行ってしまうので仕方なく追いかけていった。
「凛!!いいかげんしろ!!もう少しで暗くなるから帰るぞ」
「わかった。帰ろう」
『汝ら我の土地に何故踏み入れた』
「ん?」
「武今なんか聞こえなかった?」
「聞こえたような聞こえないような」
『汝ら我の土地に何故踏み入れた』
今度は二人にもはっきりと聞こえた。
「凛!やばいぞ。土地神を怒らせちまった」
「武!逃げましょう!!」
二人は村の方向に走り始めた。
『逃げられるとでも思うなよ』
二人の走る方向に樹が集まってくる。これでは前に進めない。
「どうしよう。逃げる方法はないのか」
「武!火はある?」
「火はない」
そうしているうちに樹に周りを囲まれてしまった。
『観念するんだな。もう逃げられまい』
成す術もなくなった武達が待っているのは「死」だ。 しかし、武はまだ何か方法があるだろうと必死に考えている。 凛は混乱していて考えることはできなくなっていた。ただ武にしがみついて震えるだけである。
「ちくしょう」
結局何かを必死に考えていた武は何も思いつかなかった。 武も何かを決心したらしく、凛を強く抱きしめた。 土地神が姿を現した。でかい刀を持っていた。それを振り上げ、一気に振り落とす。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
キィン!!!
「お前達、森の奥には行くなといっただろう」
「父ちゃん!!」
「父さん!!」
凛ももうすでに兼(けん)のことを父さんと呼んでいた。
「こんな土地神に負けていたらまだまだだな。ふん!!」
刀を弾き飛ばした。土地神は新しい刀を作り出した。 兼を切ろうと刀を横に振る。
『人間風情がなめてんじゃねぇぇぇ』
「たかが土地神が俺にたてついてんじゃねぇぇ!!」
勝負は一瞬だった。土地神の刀は振り抜かれることなく地面に落ちた。 兼の圧勝だった。
『まさか・・・お前は・・・刀神』
そこで言葉が途絶えた。兼がトドメをさしたのだ。 兼の容赦ないところをみて二人は少し怖がっていた。 同時に兼がここまで強かったことを知るのである。
『俺はまだ死なんぞ!!呪ってやる!呪ってやるぅぅぅぅぅ!!!』
先ほどの土地神は光となって凛に勢いよく入っていった。
「凛!!大丈夫か!?凛!!」
「うん大丈夫。大丈夫だから」
安心したのか武は座り込む。兼はあまりよさそうではない顔で凛を見ていた。
「凛ちゃん。左腕を見せてごらん」
凛が兼の言うとおりに左腕の袖をまくった。そうすると今まで凛の腕になかった痣がくっきりと浮かび上がっていたのである。そう、先ほどのは呪いだったのだ。その人を一生呪うといわれている呪い。呪われた人物は異能を持つといわれているがその呪いが全身にうつった場合。その人は死に至るという。その呪われた人の事を・・・
「憑者」
「なんだよ父ちゃん、憑者って」
「呪いだ、呪いを受けたものをそう呼ぶのだ」
「呪いを解く方法はないのかよ!!」
「そうだな、あるにはあるぞ」
「本当か父ちゃん!!教えろ!!俺が凛を助けるんだ!!」
「呪いがそんな簡単に解けると思うか?」
「どんなことだってやってやるさ!!」
武は凛を助けるためだったらなんでもする気持ちだった。死ねといわれたなら、それで凛が助かるなら死んでいただろう。それぐらい武の気持ちは強かった。それは兼にも伝わっていた。
「よかろう。村長の所にいってきなさい。これを持ってな」
「わかった。父ちゃん。ありがとう」
「必ず、助けるんだぞ。今日はもう遅い、早く帰ろう」
気絶していた凛は武が担いで家まで運んだ。凛が目覚めたのは家についてすぐだった。それから、凛本人の事は兼から凛に直接伝えられたのだった。
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