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作品名:倫・伽 作者:新雪隆明

第1回   1


昆納ば城は四百年余りの歴史をもっている昆納ば国の都である。城壁が高大で厚く、城の堀が広くて深い。町並みは碁盤のように融通性と芸術性をも見える。
横で数えば、第四場目の町で素馨閣という宿屋がある。長く続いてきた屋号で、ただ別の宿屋と違っているのはお菓子をも兼業しているのである。店が清潔で奉仕もよく、そして店長皀莢おばあさんが素馨焼きの作ることに特に腕が立つので、大勢の旅客がもう常客になり、昆納ば城に来たら必ずここで宿ってくる。
秋になると、素馨が咲いてきて、町中の多くの人が皀莢おばあさんの素馨焼きを買うようにかけてくる。その時、店員たちはむしろ店門の外で幾つの机を並べておいて、いろいろなお菓子を置いて、一日中忙しかったのである。皀莢おばあさんは八十歳をも越したが、やはり元気そうで、机の傍で立っていてお菓子を渡したり、お金を預かったり、そしてお釣りをして、忙しがっているのである。余り忙しい時、おばあさんの孫子達も手伝いにやってくるのである。
時下は涼しい秋、日射しが素晴らしいほどきれいである。この賑やかな町中、自分の店の前で、自ら作ったお菓子がこんなに人気のある場面をみると、そして孫子達もよく尽くすのは何よりだ…
二階から麗しい月の琴の音が伝わってきて…
月の琴は昆納ば国の国楽で、皀莢おばあさんの檀那さんがそれにごく上手である。おじいさんはこの好みがずっど前から続いてきて、暇だったらきっと屋根裏で一曲を弾く。
隣たちも皀莢おばあさんも聞くことに大好きだが、今はこんな忙しい時、自分だけで屋根裏でぶらぶらして琴を弄ぶとは。
「あの、翁、ちょっとその琴を放して手伝ってくれよ」


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