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作品名:散歩 作者:中島北斗

最終回   1
 この日は朝から晴れていた。僕は子供を連れて散歩に出かける事にした。大はしゃぎの我が子を構いながら、僕たちは近くの森の方へ向かった。
 ボロボロに舗装された道路を歩き、そしてしばらくして、森の近くにある小さな川の前に着いた。
「パパ、見て。」
息子は小川で何か見つけたようだ。小川を優雅に泳ぐおたまじゃくしとめだか。水面をすばやく滑っているアメンボ。そして、茂みの近くにはザリガニが潜んでいた。僕がザリガニを掴んで息子に見せると、
「怖いよ〜。」
と言って、泣き出してしまった。仕方が無かったので、ザリガニを元の場所に置くことにした。そのとき、何やら黒くてプニュプニュしたものを見つけた。何かの卵のようだ。
「これ食べられるの?」
「食べられないよ。食べちゃうとおなか壊しちゃうよ。」
「ふ〜ん・・・。」
息子はちょっと残念そうな顔をした。
「いつかしたら卵から子供が生まれるよ。」
「それ見て見たい。」
「あはは、また今度来た時に見てみようね。」
そう言って、僕と息子は今度は森の中に入っていった。
 森の中は木の枝と葉で薄暗かった。息子はまた何か見つけ出したようだ。
「パパ。」
息子が手を差し出すと、その手の上には色鮮やかな木の実があった。見るからにおいしそうだ。
「おいしそうだね。」
「食べられるの?」
「そうだな〜、でも毒が入っているかもしれないからやめといた方がいいかもね。」
「食べたかったのにな・・・。」
息子は木の実を草むらのほうへ投げ捨てた。そして、しばらく森の中を歩いたところで森の出口に差し掛かった。
 森を出ると、そこは草原が広がっていた。一面には黄色い花が一面に咲いていた。よく見ると、それはタンポポだった。
「これって、たんぽぽっていうんだよね?」
「そうだよ。タンポポは黄色くて小さい花なんだよ。」
そういうと、
「違うよパパ。たんぽぽはもうひとつあるんだよ。」
息子の突込みを聞いて、ああ、我が子は観察力があるんだなと感心してしまった。だが、私はあえて聞いてみた。
「もう1つのタンポポって何なの?」
「白くてふわふわして、風が吹くとふわふわが飛んでっちゃうものなの。」
「へえ、よく知っているね。」
だが息子は私がそう言ったときには、何かを探しに行ってしまった。
「どこ行くの?」
「白いタンポポ。」
息子はその白いタンポポを探しに、あちこちを探しまわった。
「あった!」
息子は草むらから何かをむしりとり、私に見せてくれた。
「白いタンポポ!」
「うわあ、本当だ。本当に白いタンポポだね。」
「うん!」
息子はうなずくと、その白いタンポポに息を吹きかけ、綿を飛ばした。
「タンポポの白いの、どこに行くんだろう。」
「どこかでまた新しいタンポポを作るんだろうね。」
「ふ〜ん・・・。」
息子は、綿がなくなったタンポポの茎を捨てると、またどこかで白いタンポポを探しに行ってしまった。
 しばらくすると、息子が私のところへ戻ってきた。
「白いタンポポなくなっちゃった。」
息子は残念そうな顔をして私に言った。そんな時、私は息子にあるものを見せた。
「じゃ〜ん。」
「何これ?」
「タンポポの冠だよ。」
実は、私は息子が白いタンポポに夢中になっているとき、黄色いタンポポを集めて、それで冠を作っていたのである。
「わ〜!本当に冠だ!」
息子は私が作ったタンポポの冠を頭に乗せようとした。しかし、冠は息子の頭を潜り抜けてしまった。
「あらら。冠じゃなくて首飾りになっちゃったみたいだね。」
「でも、首飾りでもいいよ。」
息子はそう言うと、
「タンポポの首飾り!」
とはしゃぎ始めた。よほど気に入ったのだろうか。
「パパ、これママにも見せたい!」
そう言うと息子は、草むらにある小道を走り始めた。
「おーい、待ってえ!」
私は息子の後を追いかけていった。
 ようやく息子に追いついたときには、既に我が家の前であった。
「お帰りなさい。」
「ママ!タンポポの首飾り!」
そう言うと息子は首飾りを外そうとした。そのとき、首飾りは脆くも切れてしまった。
「ああ!首飾りが・・・!」
息子は泣きそうな顔をし始めた。
「大丈夫。こうすれば直るから。」
そう言って、私は切れた部分のところを直して、首飾りを直した。
「うわー!直った直った!」
「良かったわね。」
妻は、タンポポの首飾りをかけようとした。しかし、首飾りは妻の頭を潜り抜けることなく、頭の上に乗っかった。
「ママには冠だ!」
「誰が作ったの?」
「パパが作ったの。」
息子がそう言うと、私はなんだか息子のためにしてくれたんだなと感慨深くなってしまった。
「さ、早く上がりなさい。お昼ごはんを食べましょ。」
私と息子は家の中に上がり、昼食にありついた。
 ちなみに、この日の昼食は、スパゲッティだった。


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