帰りたいなぁ。
田中は出社早々ため息をついていた。
最近、親のコネで入った会社に嫌気が差していた。 親になかば強引に入れられた会社の仕事にやる気が湧くはずが無い… だいたい真剣に働くつもりが無いからアルバイトをしていたのだから…
田中の部署は総務部総務課だった。 営業などよりは楽なはずだが、地味で根気もいる作業が多く、それが結構きつかった。
その日も社内健康診断の受診者リストを作成していたが、パソコンの画面を広げたまま、ぼーっと口をあけて遠くを見ていた。
「田中君。…田中君!」
大声で呼ばれびっくりして「はい」と間抜けな返事をしてしまった。
「リスト作成に何日かかっているの?早く仕上げてちょうだい!」
そう怒鳴るとその人は田中の向かいの席に座り、ものすごい勢いでパソコンを叩き始めた。
田中はその指先に見とれた。この人がいるから、辛うじて会社に来ていた。
江藤主任…年上の女性の先輩だった。
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