20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:Tales of Moment 作者:美怜

第4回   かみ合わない2人、空を行く船

 霧に覆われた道なき道を、ティアと協力して進んだ。

 道中現れる魔物も、2人の魔法を使って倒し続ける。離れた場所で詠唱するティアを守るフラムが時折傷を負ったが、その時はティアが治癒の水属性魔法を唱えて癒してくれた。

 数時間ほど歩いた頃だろうか。突然、目の前が開けた。

 きれいな円形の広場だ。近くにぼろぼろの小屋が建っていて、すぐそこには焚き火をした跡や、リヴェイルにつながっていると思われる小川もある。

「着いたわ。……そろそろ日も暮れるし、泊まって行って?」

 道中拾い集めていた薪を焚き火の跡にくべながら、ティアが言った。

 ここまでつき合わせておいて虫のいい話だとは思ったが、魔物は夜が近づくにつれ動きが活発になる生き物。こんな樹海を夜に出歩くなど、魔物にどうぞ襲って下さいと言っているようなものだ。

 ここは素直に彼女の好意を受け取るべきだろう。

 黙って頷き、フラムはティアの側に近づき、焚き火の跡に手をかざした。魔物相手に使う時よりもかなり弱めに魔力を練る。

 手首のアーツ・バングルが熱を手の平へ伝え、赤い球の形を形作る。

「……火球(ファイア・ボール)」

 ぼっ、と、手の平から発せられた火の玉が、くべられた薪に着火し、瞬く間に燃え広がった。

 懐から着火道具を取り出しかけたティアが、それを見てぱっと顔を輝かせる。

「あ、ありがとう!」

「……いや」

 ティアの嬉しそうな声にそれだけ返して、フラムはその場に座り込んだ。

 ふたりはしばらくお互いに黙り込んで、ぱちぱちと火の粉を舞い上げる焚き火の炎を見つめていた。

「……ねえ」

 やがて、ティアが口を開いた。

「フラム、だったわよね? 貴方はどうして外の世界に……キュアに、来たの?」

 そう尋ねるティアの表情には、興味津々の色がありありと浮かんでいた。期待に満ちた視線で、じっとフラムの顔を見つめて。

「私、外の世界に出たことがないの。……良かったら、外の話とか色々……」

「お前には関係ないだろ」

 ティアの台詞を遮り、ばっさりとフラムは言った。

 何の興味もない、とでも言いたげな、冷ややかで素っ気無い口調で。

 ティアの表情がすぐに落胆のものに変わった。寂しそうに、蒼い瞳を伏せる。

「……そう、よね。ごめんなさい」

「それに、お前こそ。……どうして追放なんてされたんだ?」

「……さっきの貴方の言葉、そっくりそのままお返しするわ」

 フラムと視線をあわせず、俯いたままティアは言った。

「貴方には、関係ない」

「……」

 何故か、むっとした。

 不思議だ。

 ついさっき、自分が同じ言葉を言った時には、こんな感情抱かなかった。

 ごく当然のように、言えた筈なのに。

「……ごめん、なさい」

 最後に、か細くティアが呟いた……その直後。



 ごう、という轟音と共に、頭上を何かが通り過ぎて行った。

 とてつもなく、巨大なものが。



「「!?」」

 ぎょっとして、2人が立ち上がる。

 数秒遅れて風が巻き起こり、2人の髪をあおる。風にあおられた焚き火が大きく揺らめいた。

「な……何?」

「今のは……!」

 飛び去っていた方角……樹海のさらに奥地のほうを、フラムがきっと睨んだ。

 一瞬、見えた。

 見覚えのある、マークが。

「……帝国の飛空挺!」

「え!?」

 驚くティアの事は、もはや眼中になかった。

 忘れるものか。

 あの船が、そしてあれに刻まれた国章が、自分にもたらしたものを。

「まさか……こんな所でお目にかかるとはなっ!」

 こうしちゃいられないとばかりに、フラムは駆け出した。

「あ! フラム!?」

 後ろからのティアの叫び声に、無視を決め込んで。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4616