霧に覆われた道なき道を、ティアと協力して進んだ。
道中現れる魔物も、2人の魔法を使って倒し続ける。離れた場所で詠唱するティアを守るフラムが時折傷を負ったが、その時はティアが治癒の水属性魔法を唱えて癒してくれた。
数時間ほど歩いた頃だろうか。突然、目の前が開けた。
きれいな円形の広場だ。近くにぼろぼろの小屋が建っていて、すぐそこには焚き火をした跡や、リヴェイルにつながっていると思われる小川もある。
「着いたわ。……そろそろ日も暮れるし、泊まって行って?」
道中拾い集めていた薪を焚き火の跡にくべながら、ティアが言った。
ここまでつき合わせておいて虫のいい話だとは思ったが、魔物は夜が近づくにつれ動きが活発になる生き物。こんな樹海を夜に出歩くなど、魔物にどうぞ襲って下さいと言っているようなものだ。
ここは素直に彼女の好意を受け取るべきだろう。
黙って頷き、フラムはティアの側に近づき、焚き火の跡に手をかざした。魔物相手に使う時よりもかなり弱めに魔力を練る。
手首のアーツ・バングルが熱を手の平へ伝え、赤い球の形を形作る。
「……火球(ファイア・ボール)」
ぼっ、と、手の平から発せられた火の玉が、くべられた薪に着火し、瞬く間に燃え広がった。
懐から着火道具を取り出しかけたティアが、それを見てぱっと顔を輝かせる。
「あ、ありがとう!」
「……いや」
ティアの嬉しそうな声にそれだけ返して、フラムはその場に座り込んだ。
ふたりはしばらくお互いに黙り込んで、ぱちぱちと火の粉を舞い上げる焚き火の炎を見つめていた。
「……ねえ」
やがて、ティアが口を開いた。
「フラム、だったわよね? 貴方はどうして外の世界に……キュアに、来たの?」
そう尋ねるティアの表情には、興味津々の色がありありと浮かんでいた。期待に満ちた視線で、じっとフラムの顔を見つめて。
「私、外の世界に出たことがないの。……良かったら、外の話とか色々……」
「お前には関係ないだろ」
ティアの台詞を遮り、ばっさりとフラムは言った。
何の興味もない、とでも言いたげな、冷ややかで素っ気無い口調で。
ティアの表情がすぐに落胆のものに変わった。寂しそうに、蒼い瞳を伏せる。
「……そう、よね。ごめんなさい」
「それに、お前こそ。……どうして追放なんてされたんだ?」
「……さっきの貴方の言葉、そっくりそのままお返しするわ」
フラムと視線をあわせず、俯いたままティアは言った。
「貴方には、関係ない」
「……」
何故か、むっとした。
不思議だ。
ついさっき、自分が同じ言葉を言った時には、こんな感情抱かなかった。
ごく当然のように、言えた筈なのに。
「……ごめん、なさい」
最後に、か細くティアが呟いた……その直後。
ごう、という轟音と共に、頭上を何かが通り過ぎて行った。
とてつもなく、巨大なものが。
「「!?」」
ぎょっとして、2人が立ち上がる。
数秒遅れて風が巻き起こり、2人の髪をあおる。風にあおられた焚き火が大きく揺らめいた。
「な……何?」
「今のは……!」
飛び去っていた方角……樹海のさらに奥地のほうを、フラムがきっと睨んだ。
一瞬、見えた。
見覚えのある、マークが。
「……帝国の飛空挺!」
「え!?」
驚くティアの事は、もはや眼中になかった。
忘れるものか。
あの船が、そしてあれに刻まれた国章が、自分にもたらしたものを。
「まさか……こんな所でお目にかかるとはなっ!」
こうしちゃいられないとばかりに、フラムは駆け出した。
「あ! フラム!?」
後ろからのティアの叫び声に、無視を決め込んで。
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