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美しい暦 les jours de l'elegance
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作品名:美しい暦 les jours de l'elegance
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作者:zep
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第3回
あけぼの2号
「やあ衿ちゃん、久し振りだね。これで行くの?」 「あら、耕治クンじゃない。そうだよ。」 「見送りとか誰かと一緒なの?」 「ううん、一人。」 「俺さぁ、家族同伴なんだよ。何号車?」 「確か9号車だったと思うけど。」 「じゃ、あとで行くね。」 これだけ言うと、耕治は衿子の肩越しの向こうに知合いの女の子のグループを認めるや否や、早々とその輪の中に入って行って、早速歓声を上げていた。 「あの人はきっと材木屋の息子なんだわ、いつでもキが多いんだから。今度言ってあげなくちゃ。」 発車の長いベルを聞きながら、衿子はひとりで呟き乍ら自分の寝台番号を探していた。
上着を掛けて休むにはまだ早い時分だったので、衿子は真っ暗な大きな車窓からぼんやりと流れる闇夜を眺めていた。案の定、さっきの材木屋がお節介にも缶コーヒーを二つ持ってやって来た。衿子は待っていた訳じゃなかったし、寧ろ折角ひとりになってこれからの一年の計画をもう一度ゆっくり考えようとしていたから、その気持ちが、曖昧に掻き回されそうで、見つかったという気持ちだった。
衿子と高校卒業以来の世間話や友達の動向等を話している裡に、耕治は段々と、今の自分の心情とか心の底に沈殿しているもの、その沈殿物のせいで少し歪になってしまっていると自分でも判っている価値観等について、正直に衿子に全部話してしまいたくなっていった。同時に、高校時代深く付き合った子と一年以上前に別れて以来、自分の痛手が未だに完全に癒されてはいないと謂う現実を、衿子との会話を通して今更の様に再認識してしまった。
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