〜兎我沼の伝説〜「場秋村、わさき町の昔話集第13巻」より。
とわぬまのまわりには、うさぎがたくさんすんでいました。
また、たくさんの木の根やツタがはえていました。
うさぎさんたちは、かわいそうに、その木の根やツタにぶつかったり、からまったりして、しんでしまうことが多かったのです。
だけど、村人たちは、うさぎをかわいそうに思うよりも、うさぎをたくさん食べたかったから、うれしく思いました。
沼の近くでうさぎがからまって死んでいるのを見つけると、かわいそうと思うよりも先に、「やったぞお、これでうさぎが食べられる」
と、おおよろこびしていました。
何もしなくてもうさぎが手にはいるので、村人たちは、とわぬまがだいすき。
いつも、とわぬまのまわりをぐるぐるまわって、
死んでいるうさぎはいないかと、うつむいてさがしていました。
だけど、ときはながれて、時代がかわり、もう、うさぎたちはとわぬまにちかづかなくなった。
だから、もう、とわぬまにはうさぎなんていないのに、
おろかな村人たちは、とわぬまのまわりをまわるのをやめませんでした。
そうだ、もっともっと、木の根やツタを、多くしたらどうか?
罠をしかけたらどうか?
いや、沼に、こどもをささげたらどうか?
村人たちはいろいろやってみたけれど、ちっともうまくいきません。
苛苛して、ムカムカして、うさぎを、あのうさぎの味をもう一度味わいたい。
そればかり考えて、うろついていたものですから、
いつのまにか夜になり、
足をとられて、沼に沈んでしまう大人がおおかったそうです。
沼の中には、海草がいっぱいあって、足にからまり、身動きがとれなくなる。
そうして、死んでしまう人たちを見て、他の村のひとたちは、
「あははははは。まるで、足をとられて死んでいく兎みたいだ」
といいました。
うさぎをおいかけているつもりが、じぶんがうさぎみたいに死んでしまうことになってしまった。
だから、この沼は、兎我沼って、呼ばれているのです。
おしまい
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