最後の最後で手を抜くぐらいなら、最初からしないほうがいい。
そう、そうだったの。
私が、実くんが肉を吐いてしまったことを伝えたとき、真理恵は激怒した。
冷たい床に額を押し付けられ、散らばった汚物を全て舐め取るように言われた。
私は、その命令には従順に従った。
何でかな・・・。
罪悪感があったのよね。それと・・・
真理恵が、何だか、かわいそうで。
その後、真理恵の母親の容態が悪化した。
右手全体が、びっしりと鱗に覆われていた。
痒い、痒い、とヒステリックに叫ぶ母親の、右腕の肉を、真理恵は・・・。
そして、丁寧に、今度は自分で、調理し始めた。
お弁当箱に詰められたそれは、まるで、見かけ上、親子がピクニックに行く時のランチみたいに、綺麗に盛り付けられていたわ。
母親に、痛みは、なかったらしい。
だけど、もう、心が限界だったんだろうね。
その後、線路に飛び込んで死んだ。
ぐちゃぐちゃになった肉片には、きっと、いくらか鱗もまざっていたんだと思うけど・・。
不思議と、片付けてくれた人たちは、そのことを追求しなかったんだって。
轢死して散らばった肉って、解体したお魚に似てるからかなあ・・・?
その時はとっても落ち込んだけれど、 だけど、その後、素敵なことだってあったんだよ。
私の体にも、変化は起きた。 幸いながら、このうつくしい外見はそう変わらなかったんだけれどね。
私は、愛の証を生み出すことができたの。
私の口から産まれた、ぬらりとした、卵。
そこから、何と、みーくんそっくりな、人魚が、生まれたんだよ!
真理恵は、それを見てすっかり機嫌を良くした。 彼女は、人魚に、りゅうくんって名前をつけた。
りゅうくんは、鼠や猫や、小さい子どもを食べて、すくすく大きくなったよ。
りゅうくんと一緒にいるときの真理恵は、とっても輝いてるように見えたなあ。
りゅうくんは、すくすく、すくすく大きくなって、 バスタブじゃあ飼えないくらい、 男の人の頭なんて、簡単に食いちぎれるように大きくなったんだよ!
真理恵は、実くんを、りゅうくんの餌にしたいって言ってた。
・・・そうなんだー、って、私、もうその頃には、どうでもよくなっちゃって。
だって、そんなことよりも、うーん、水が、汚れた水で、兎我沼の水で泳ぐことが、だーいすきだったから。
ああ、そうだ、私は、汚水の中で生まれて、汚水に住むのがぴったりで、もう、これ以上、何もいらない。
そう思いはじめていた。
ふう・・・。
色々思い出したら、疲れちゃった。
わたし、もうおかしくなってるんだろうなあ。
ふふふふっ。
うーん、て、腕を伸ばして眠りたいけど、その腕も、もう無い。
体を横たえたいけれど、その体は、ほとんど無いに等しい。
ただ、水槽の中、汚水の中に、崩れた私の頭が浮いているだけ。
・・・真理恵、早く帰ってこないかな〜。
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