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作品名:汚水 作者:tomosibi

第88回   みーくんのぶつ切り
真理恵は、ぞっとするような顔でにんまりを笑顔を見せた。可愛らしい唇がいびつに歪む。
そして、こう言った。
「あははっ。いいこと思いついちゃった!!」

真理恵は母親を置き去りに、再び台所へと走る。

ごしょごしょ、ぶつぶつ。

「・・真理恵?」

しばらくして、真理恵が、何かを持って出てきた。

蛍光灯の下で光るそれが何なのか、わかったとき私は「うっ」と気持ち悪くなった。

ビニール袋に一杯の、みーくんのぶつ切り。
皮が剥かれたそれは、一見、スーパーの食料品売り場でパック詰めされたお肉みたい。

だけど、肉片のひとつひとつが、うっすらと緑のどろどろにまみれているのが、異常な雰囲気をかもし出していた。

真理恵は、予想していたとおり、恐ろしいことを言う。

「・・・千春、私のこと、好き?」

「す、好きよ」

「じゃあ、わかるよね?」

「あの、それ、その肉・・」

「復讐しようよ、千春」

「ううっ」

「これ、実くんに、食べさせて?」







ああ、苦しい。ああ、恐ろしい。

あっちへいったり、こっちへいったり、
適当に生きてきたこの人生。

その結果がこれだわ。

私は、自分で決めなくちゃいけない。

真理恵のしたいことをしてあげるのか・・・。
それとも、実くんを助けるのか・・・。

小さなクーラーボックスに入れた肉を、抱えて、私は暫くの日々、悩んだわ。

・・・馬鹿だね。今思えば、最善の方法は、他にあったのに。

私は、自分で考えられない子だったの。

ま、幼少期から、そうして来たんだものね。

突然、変われるわけないか・・・。

つまり、私は、私に発せられた命令には、絶対服従の姿勢で生きるってプログラムされてるようなものよ。

ネットでは強気でも、私なんて、こんなもの。

こんなものなんです。




さて、結局私がどうしたかっていうとね。

真理恵の願いを、中途半端に叶えた。

あの日、実をこのアパートに呼ぶ前に、私は、こっそり冷蔵庫に用意しておいたのだ。

___________嘔吐剤。

実に、人魚の肉を食べさせる。

だけど、それと同時に、このボトルに入った嘔吐剤を飲ませる。



それが、私の選んだ方法だった。

・・・・・・結果として、それは、さらに残酷な事態を招いてしまったけど。



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