真理恵は、ぞっとするような顔でにんまりを笑顔を見せた。可愛らしい唇がいびつに歪む。 そして、こう言った。 「あははっ。いいこと思いついちゃった!!」
真理恵は母親を置き去りに、再び台所へと走る。
ごしょごしょ、ぶつぶつ。
「・・真理恵?」
しばらくして、真理恵が、何かを持って出てきた。
蛍光灯の下で光るそれが何なのか、わかったとき私は「うっ」と気持ち悪くなった。
ビニール袋に一杯の、みーくんのぶつ切り。 皮が剥かれたそれは、一見、スーパーの食料品売り場でパック詰めされたお肉みたい。
だけど、肉片のひとつひとつが、うっすらと緑のどろどろにまみれているのが、異常な雰囲気をかもし出していた。
真理恵は、予想していたとおり、恐ろしいことを言う。
「・・・千春、私のこと、好き?」
「す、好きよ」
「じゃあ、わかるよね?」
「あの、それ、その肉・・」
「復讐しようよ、千春」
「ううっ」
「これ、実くんに、食べさせて?」
ああ、苦しい。ああ、恐ろしい。
あっちへいったり、こっちへいったり、 適当に生きてきたこの人生。
その結果がこれだわ。
私は、自分で決めなくちゃいけない。
真理恵のしたいことをしてあげるのか・・・。 それとも、実くんを助けるのか・・・。
小さなクーラーボックスに入れた肉を、抱えて、私は暫くの日々、悩んだわ。
・・・馬鹿だね。今思えば、最善の方法は、他にあったのに。
私は、自分で考えられない子だったの。
ま、幼少期から、そうして来たんだものね。
突然、変われるわけないか・・・。
つまり、私は、私に発せられた命令には、絶対服従の姿勢で生きるってプログラムされてるようなものよ。
ネットでは強気でも、私なんて、こんなもの。
こんなものなんです。
さて、結局私がどうしたかっていうとね。
真理恵の願いを、中途半端に叶えた。
あの日、実をこのアパートに呼ぶ前に、私は、こっそり冷蔵庫に用意しておいたのだ。
___________嘔吐剤。
実に、人魚の肉を食べさせる。
だけど、それと同時に、このボトルに入った嘔吐剤を飲ませる。
それが、私の選んだ方法だった。
・・・・・・結果として、それは、さらに残酷な事態を招いてしまったけど。
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