だけど、ある日、選ばなくてはならないときがやってきた。
深夜、真理恵は突然起き出して、みーくんの住むお風呂場へと入っていった。 その足音はとても大きくて、私、びっくりして起きた。
「きいきい」
みーくんの悲痛な声が響く。
私は、何が起こっているのか確かめに、そっと覗いてみた。
びっくりした。 真理恵は、あの、大切な、みーくんを、がっちり両の手で掴んで、絞め殺そうとしていた。
「真理恵!!やめてあげて!!!!」
私は焦って真理恵のもとに駆け寄った。
あの時の真理恵の目、すごく怖かったなー。
しかし真理恵は手の力を弱めることがなく、みーくんは、緑色のどろどろを吐きながら息絶えてしまった。
「きゅう。」
真理恵は、舌打ちしながら手に付いたドロドロを洗い流し、そのまま台所へ向った。
ずる・・・ずる・・・・・・
彼女は、ボゥルを取り出して、みーくんの血を絞りだしはじめた。
「な、ねえ、何してるの!?」
私が、喉の奥から声を絞りだすと、真理恵は、げたげたくつくつと笑った。 そして、驚くことを言った。
「千春〜、これ、ママにあげてきて」
「えっ!?・・この血を?それは危険だよ、真理恵」
「いいから!!」
「でも・・・」
「じゃあ、千春、あんたが飲む?」
「い、嫌だ」
「ふん。じゃあ、もういいわよ。私がやる」
真理恵はどかどかと、彼女の母親のベットに近づいていった。
あの頃、もう真理恵のママはめちゃくちゃに衰弱していて、 そして、頭もおかしくなってきているようだった。
「うう〜ん。ああ〜?」
目を擦りながら目覚めたばかりの母親に、真理恵は優しく声をかける。
「ママ、元気のでる薬だよ。人魚の血だよ。飲みな」
「うう、くさい、くさい」
「くさくないよ。いいから飲んでみて?」
「い、いやよ〜」
真理恵は、薄く微笑んだ表情は崩さないまま、がしっ!と、母親の髪の毛を掴んだ。 そして、もう片方の手で、みーくんの血の入ったボゥルを傾け、母親の口に無理矢理流し込んでいく。
「ぐええええええええええ」
ごくん、ごくん、と音がして、大量の、緑のどろどろが喉を通過していった。
「ごほっ、ごほっ」
真理恵の母親は、咳き込みながら俯いた。
「うえええええ」
吐き出そうとするが、どろどろはもう彼女の体の中にしっかりと染み渡っていったようだ。
「ちょっと見せて」
真理恵は、母親の口の中を覗きこんだ。 私も、真理恵に頬をくっつけて、ぬらぬらと光るその舌を見た。
そして、びっくりした。
よくよく見なければわからないくらい小さく、薄いものだけど。
既に、舌に、びっしりと、鱗が生えていた。
「まりえ〜!何飲ませたああああああ」
母親は怒るけれど、上手く力が入らないみたいだ。
その母親を見下しながら、真理恵は呟いた。
「なるほどね〜。だけど血は飲みにくいよね。だけど、肉はどうかしら? ・・・血がこんな効果を及ぼすなら、肉にだって不思議な力があって然るべきよね。ふむふむ」
私は、心の奥にひんやりするものを感じながら尋ねてみた。 「・・・真理恵、あの、もしかして・・・・・」
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