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作品名:汚水 作者:tomosibi

第86回   水槽の中から
ぱちん。

あ。

目の前で、ノートパソコンが閉ざされてしまった。

もっと続きが読みたかったのに。

あの頃のわたしを振り返りたかった。

唇を噛みながら、見つめていたけど、
彼女はもう、私の書いた日記に興味がなくなってしまったらしい。

あ、出かけちゃうの?

私は焦って口をぱくぱくさせた。それに、頭をゆらゆらさせたけれど、
それはただわずかな気泡を生じさせただけだった。

彼女は出かけるようだ。

また、しばらく一人になっちゃう。くすん。

じゃあ、私は、頭の中で、霞がかったメモリイを呼び出して楽しむことにしましょう。

・・・・・・・そう、私は、あの頃、真理恵ちゃんと実くんの間で心が揺れていたの。

ああ、彼らはどちらもか細くって、無邪気で、同じような香り・・湿った赤ちゃんみたいな香りをもっていた。

真理恵を抱きしめているときも、実くんに抱きしめられているときも、ここちよかったから。

わたしは、どっちかなんて、えらべなかったの。


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