兎我沼に生き物が居るんだ…。
私は、なんだか、その鱗がいとおしくなって、そっと、部屋に持ち帰った。
部屋の戸を閉めたと同時くらいかな。ママがまた、キッチンで暴れてる。
…でも、この部屋を追い出される心配は無いものね。
「あんしん、あんしん…」
余裕めかして口に出しても、涙が出る。
ごろん、と床に寝転がり、鱗を電気にかざしてみる。
3、4センチ四方のそれは、青く、透き通っていた。 光を当てる角度を変えると、虹色に反射する。
「きれい…」
目を閉じる。
青い鱗の、人魚を想像する。
汚辱と腐敗にまみれた水の底で、
差し込んでくる、地上の光を、まぶしく感じている、人魚。
人魚は、肌が白くて、やわらかい髪で、金色の首飾りをしていて…
残酷で、でも、優しくて。
「ちはる…」
その夜も、千春に電話することにした。 沈黙の多い会話だったけど、 千春は、優しくて、何時間でも、相手してくれた。
その日の電話の最後に、千春は言った。
「ねえ。真理恵。私、そっちに住もうか」
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