電話した。
少し、いや、結構、私は、泣いた。
泣くってどんだけぶりだろう。
ああ。
そうか。
私は、悲しかったんだ。
千春は、ロクなアドバイスをくれなかったけれど、 ただ、受話器の向こうで、泣いているようだった。
それが、一番、心地良いことだった。
それ以来。
千春と私は、すこし、心が、近くなった。
サイトの運営についても、私がちょこちょこ口を出したり、するようになって。
直接会うことは難しくても、私たちの心は、結構、近くなった。
月一の交わりは続いた。
ママは荒れた。
ママは、月一が終わる度、酒を煽るようになった。
それと…
「ママ?」
帰宅したママが、またしても生臭い。そして、全身、ぬらぬらと光っている。
「ママ、臭うよ?それに、また、藻がついてる」
ママは、髪に絡みつく汚物をひとつひとつ引き剥がしながら、 焦点の合っていない目で私をじっと見る。見る。
「ママ泳いできたから」
「えっ」
「と・わ・ぬ・ま。 ママ、最近、兎我沼で泳ぐのが好きなの」
「兎我沼で!?」
「そう。あそこには誰もいないし」
くくくくく、といいながら、ずぶ濡れの下着を取り替え始めた。
「ママもぉ、真理恵みたいに、ナイスなプロポーションになりたいの。 そしたら、パパも、ママを好きになっちゃうかも、しれないじゃな〜い」
ぼと、ぼと、と、絨毯の上に、落ちる、黒い汁。
兎我沼は、この町のはずれにある山の中にある、小さい沼だ。 あくまで、沼。しかも、澱みきってる。
「う」
ママが脱いだ服からものすごい腐敗臭がして、私は息ができなくなった。
洗濯しなきゃ。
そっとつまみ上げたワンピースから、汚水とともに、何かが転がり落ちてった。 蛍光灯に照らされて、キラ、と光る。
「何、これ…」
綺麗。
拾う。
青い。
…鱗?
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