はじめは何を言われているのか、よくわからなくて、 私は、裂けたカーテンをぼんやり見つめていた。
頭をこずかれながら、何度目か聞きなおして、やっと、目の前の人の言っていることが理解できました。
ママは乾いた唇を舐めながら、こういう話をしたのです。
@このアパートはパパが所有権を持っている。ので、私たちは、タダで住ませてもらえていた。
Aだけどもこの不況下、パパは、アパートを売らなきゃいけない事情ができたのでした。家族を安心して食わせていかなきゃならないからね。(注:この場合の家族とは、パパの「現在の」家族を指す)
Bで、私たちには出て行って欲しい、と、おっしゃっておられるそうです。
Cママは出て行く気は無い、と申しました。
Dパパは出て行け、とおっしゃいました。
Cママは、出て行く気は無い、と申しました。
Eパパは出て行って欲しい、とおっしゃいました。そもそも慰謝料もろもろはもう支払い終わったのであるから、自立してどこか遠くの町で僕たち家族とは離れて暮らしてみてはだうだい?と。
Fママはry
私は理解しました。
ふむふむ。
「あのさ、ママ」
「ひどい話でしょう!?全く。本当に。ひどい話だわ!なんで私たちが」
「ママ、聞いて?」
「真理恵〜ママかわいそうでしょう!?でもこれも真理恵のために頑張ってるのよママ」
「ママ」
「何よ!!」
「私たち、引っ越さない?」
ママは歯茎をむき出しにしてきぃっと鳴いた。
猿っぽいと思ったけどそれを言ったら殺されるのでスルーして続けた。
「もう、パパ達とは離れたほうがいいよ。お金のことも、心も、距離も、離れたほうがいいと思う。
家賃、払えばいいじゃない。狭くてもさ、どっかの部屋を借りたらいいよ。
見晴らしがよくてさ、きれいな水の…海とか、見える場所で、
やりなお」
殴られました。
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