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作品名:汚水 作者:tomosibi

第62回   真理恵K
「ママ」

ママは、あられもない姿で、テーブルやら椅子を倒し、
食器を何枚かおじゃんにしちゃったみたいだ。

「ママ、こんなことだめだよ」

ぜえ、ぜえ、と肩で息をするママを、極力穏やかな声でなだめる。






「近所に迷惑だよ?ママ」

「いいのよ!もう隣も下も誰も住んでないんだから!
みんな引っ越してったじゃない!!」

「いや、だからさ、みんな、その、迷惑してんだよ」

「迷惑だから何よ!!ええ!!あたしは、辛いのよおおおおおおおお
飲まなきゃ、こうして、暴れでもしなきゃ、やってけないわよ、
ああ、辛い辛い辛い辛い死にたい死にたい死にたい死にたい死に」

はあ〜。
また、これだわ。

「ママ、このままじゃ、このアパートのオーナーに、怒られるよ」





次の瞬間、ママは何故かものすごく気分を害したらしく、ビンタされた。
畜生。

「あの人に、私たちを、怒る資格、無いわ!
追い出されて、たまるもんですか!
資格なんて、ない、そう、あのひとに、そんな資格なんて無いのに、
出てけですってえ!?畜生!!

うわああああああああああああ!!」

「落ち着いて、ママ!」

「なんで私たちが出て行かなきゃなんないのよ!!
もとはと言えば、あいつが!!あいつの責任じゃない」

「あいつって?」

「あんたの父親よぉ!

あーあアンタなんか生まなきゃよかった。
そしたらどこでも行けたのに。

真理恵のために、ずっと我慢してたのよ。くそぅ」

「もうそろそろ静かにして。ママ。大家さんに怒られる」







「大家さん大家さんっていうけどね、真理恵?

このアパート、誰のものか知ってるの?」

「え? どういうこと?」

「このアパートはねえ、パパのものなの。

パパが、私たちを哀れんで、タダで、住ませてくれてんのよ。

ふん。まあ、パパからしたら、ゴミみたいな建物だけどね。

そうゴミ!ゴミ!ゴミの廃墟をあてがわれてんのよ。

ゴミなんだから、住ませてくれたっていいじゃないのよおおおお。

それなのに、出て行けなんて、なんで言われなきゃなんないのよー!!!」

ママはカーテンを乱暴に引っ張った。
安物のそれは、びりびりと破けてしまって、元に戻らなくなった。





へぇ!

知らなかった!
このアパート、パパのものだったのか!

だから、今まで、こんなにうるさくしても、出て行かなくて済んでたのかぁ。




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