「ぜ、全部吐き出したのね?」 「ゴホゴホ…あぁ、吐いちまったよ。何だよ、これ!…ゲホゴホ」
…この女、狂ってんのか!?マジぶっ殺す!
「何すんだよ!てめえ!」 天井が割れそうなでかい声でそう叫んで勢いよく立ち上がった。 が、しかし、千春さんの様子が余りにも拍子抜けだった。
千春さんは、ぷるぷる震えながら泣いていた。 「ご、ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」 ドロドロになった両手を拭こうともせず、 身を小さくして、本当に申し訳なさそうに泣いている。
一瞬湧いた怒りがあっというまにしゅうんと小さくなる。
俺は黒いゲロまみれのまま、そっと千春さんの肩を抱いた。 「…もういいや。俺の体ためを思ってやったんだろ」 千春さんはビクっと身を震わせ、黙っている。
「取り敢えず、シャワー貸してくれよ。このままじゃやべえだろ」
俺は風呂に繋がっているであろう引き戸を開けようとした。 すると、千春さんが全力で制止してきた。さっと立ちふさがってくる。
「あ!シャワーは、使えないの!」 「何でだよ」 「えっと、壊れてるの。だから、ごめんなさい。ここは開けないで!」
「ちぇっ。もういいや。じゃあ、もう汚くてもいいから…」 千春に触れようとすると、 「ぎゃっ」 ババアみたいな声を出して後ずさりしやがった。
…俺はうんざりした。 マジ気分悪い。 「ちっ」 壁を勢いよく蹴ってみる。 千春はまたびくっとする。
「俺、帰るぞ。」 「あ、着替えを…」 「いいって。じゃあな」 「あの、明日の、部活は…」 「あぁ。何かもういいや。怪奇の研究にも飽きたし」 「えっと…。では… さようなら」
俺は返事をせずに部屋を後にした。
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