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作品名:汚水 作者:tomosibi

第5回   シャワーは使えない
「ぜ、全部吐き出したのね?」
「ゴホゴホ…あぁ、吐いちまったよ。何だよ、これ!…ゲホゴホ」

…この女、狂ってんのか!?マジぶっ殺す!

「何すんだよ!てめえ!」
天井が割れそうなでかい声でそう叫んで勢いよく立ち上がった。
が、しかし、千春さんの様子が余りにも拍子抜けだった。

千春さんは、ぷるぷる震えながら泣いていた。
「ご、ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」
ドロドロになった両手を拭こうともせず、
身を小さくして、本当に申し訳なさそうに泣いている。

一瞬湧いた怒りがあっというまにしゅうんと小さくなる。

俺は黒いゲロまみれのまま、そっと千春さんの肩を抱いた。
「…もういいや。俺の体ためを思ってやったんだろ」
千春さんはビクっと身を震わせ、黙っている。

「取り敢えず、シャワー貸してくれよ。このままじゃやべえだろ」

俺は風呂に繋がっているであろう引き戸を開けようとした。
すると、千春さんが全力で制止してきた。さっと立ちふさがってくる。

「あ!シャワーは、使えないの!」
「何でだよ」
「えっと、壊れてるの。だから、ごめんなさい。ここは開けないで!」

「ちぇっ。もういいや。じゃあ、もう汚くてもいいから…」
千春に触れようとすると、
「ぎゃっ」
ババアみたいな声を出して後ずさりしやがった。

…俺はうんざりした。
マジ気分悪い。
「ちっ」
壁を勢いよく蹴ってみる。
千春はまたびくっとする。

「俺、帰るぞ。」
「あ、着替えを…」
「いいって。じゃあな」
「あの、明日の、部活は…」
「あぁ。何かもういいや。怪奇の研究にも飽きたし」
「えっと…。では… さようなら」

俺は返事をせずに部屋を後にした。


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