「うわ!」 俺はのけぞった。
グチャグチャ!ガリガリ!!
ランタンに照らされた風呂場は、全体がベトベトと濡れているようだ。
そして、バスタブの中には、何か巨大な肉塊がうごめいていた。 そいつが、何か食ってる。
グチャグチャ!グチャグチャ!ガリガリ!ガリガリガリガリガリガリガリ!
俺はどうすればいいのかわからない。 全身が震える。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 風呂場の壁に反響する高い声。
一瞬、真理恵の声かと思ったが、そうじゃなかった。
肉塊が叫んだらしい。
暗闇の中だが、その肉塊の目が、俺に向けられた気配を感じた。
「グルルルルルルルルルルッ」
肉塊は唸っている。
「おい!!真理恵!!!真理恵!!!」
俺は、目が怪物に釘付けになったまま、背後にいるはずの真理恵に言った。
「明かり、明かりをつけてくれ!たのむ」
くすくすと笑いながら、真理恵は蛍光灯のスイッチを入れた。
数秒の間を置いて、明かりがつき、風呂場の全体が照らされた。
…俺は後悔した。
見なければ良かった。
怖い。
怖いよ!!
風呂場の正面、大きな鏡に、溶けそうな半漁人が映っている。
青い鱗は、全身に転移し、今や、びっしりと俺を覆っていた。
そして、前あった俺の皮膚はぐちゃぐちゃと腐り、黒く、全身にまとわりついていた。
顔は、まさしく、蛇。
前あった俺の顔の肉、俺のもともとの目は、崩れ落ちたようだ。 替わりに、眼球は、黄色く、ワニのように縦に割れた瞳孔を持っていった。 新しい顔。新しい目。裂けてしまった口。
これは、俺?
俺は?
「人魚だよ」
背後で真理恵が言い放った。
そして、バスタブの中を指差す。
見ると、グチャグチャやっていたそいつは、俺と、そっくりな。
「そのこも、人魚!」 真理恵は嬉しそうに言う。
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