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作品名:汚水 作者:tomosibi

第47回   半漁人
「うわ!」
俺はのけぞった。

グチャグチャ!ガリガリ!!


ランタンに照らされた風呂場は、全体がベトベトと濡れているようだ。

そして、バスタブの中には、何か巨大な肉塊がうごめいていた。
そいつが、何か食ってる。

グチャグチャ!グチャグチャ!ガリガリ!ガリガリガリガリガリガリガリ!

俺はどうすればいいのかわからない。
全身が震える。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
風呂場の壁に反響する高い声。

一瞬、真理恵の声かと思ったが、そうじゃなかった。

肉塊が叫んだらしい。

暗闇の中だが、その肉塊の目が、俺に向けられた気配を感じた。

「グルルルルルルルルルルッ」

肉塊は唸っている。

「おい!!真理恵!!!真理恵!!!」

俺は、目が怪物に釘付けになったまま、背後にいるはずの真理恵に言った。

「明かり、明かりをつけてくれ!たのむ」


くすくすと笑いながら、真理恵は蛍光灯のスイッチを入れた。

数秒の間を置いて、明かりがつき、風呂場の全体が照らされた。

…俺は後悔した。

見なければ良かった。

怖い。

怖いよ!!

風呂場の正面、大きな鏡に、溶けそうな半漁人が映っている。

青い鱗は、全身に転移し、今や、びっしりと俺を覆っていた。

そして、前あった俺の皮膚はぐちゃぐちゃと腐り、黒く、全身にまとわりついていた。

顔は、まさしく、蛇。

前あった俺の顔の肉、俺のもともとの目は、崩れ落ちたようだ。
替わりに、眼球は、黄色く、ワニのように縦に割れた瞳孔を持っていった。
新しい顔。新しい目。裂けてしまった口。

これは、俺?

俺は?

「人魚だよ」

背後で真理恵が言い放った。

そして、バスタブの中を指差す。

見ると、グチャグチャやっていたそいつは、俺と、そっくりな。

「そのこも、人魚!」
真理恵は嬉しそうに言う。


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