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作品名:汚水 作者:tomosibi

第36回   がたがたがた
「これ、お前の、アパート?」
「そ。あたしの、アパート」

どういうことだろう?

がたがたがたがたがたがたがたがた。

考えていると、突然、足元で、ドブの蓋が鳴った。

「何だ…?鼠?」

真理恵はしゃがみこむと、ありえない名前を呼んだ。

「ちはるー」

がたっがたっがたっがたっ

鉄の蓋が、さっきよりも大きく震える。

真理恵が俺を見上げて明るく言う。

「ちはるだぁ〜」

「はあ!?」

「なあるほど、下水道を通って来たほうが近道だったんだね〜」

がたがたがたがたがたがた…ばん!

ゆれ続ける蓋を、まりえは勢いよく踏みつけた。
すると、あたりは静寂に包まれた。

「さてさて、部屋に行こうか。実君!
…千春も自分で上がって来るよ。あっという間に」

ごうごう。風のおと。
ぴちゃぴちゃ。俺の皮膚の溶ける音。

かんかん。鉄の階段を上る音。

「さ、早く上がって来てよ」
スカートをはためかせて、少女は俺に手招きをする。

静かになった鉄製の蓋をちょっと眺めてから、俺も階段を上りはじめた。


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