「これ、お前の、アパート?」 「そ。あたしの、アパート」
どういうことだろう?
がたがたがたがたがたがたがたがた。
考えていると、突然、足元で、ドブの蓋が鳴った。
「何だ…?鼠?」
真理恵はしゃがみこむと、ありえない名前を呼んだ。
「ちはるー」
がたっがたっがたっがたっ
鉄の蓋が、さっきよりも大きく震える。
真理恵が俺を見上げて明るく言う。
「ちはるだぁ〜」
「はあ!?」
「なあるほど、下水道を通って来たほうが近道だったんだね〜」
がたがたがたがたがたがた…ばん!
ゆれ続ける蓋を、まりえは勢いよく踏みつけた。 すると、あたりは静寂に包まれた。
「さてさて、部屋に行こうか。実君! …千春も自分で上がって来るよ。あっという間に」
ごうごう。風のおと。 ぴちゃぴちゃ。俺の皮膚の溶ける音。
かんかん。鉄の階段を上る音。
「さ、早く上がって来てよ」 スカートをはためかせて、少女は俺に手招きをする。
静かになった鉄製の蓋をちょっと眺めてから、俺も階段を上りはじめた。
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