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作品名:汚水 作者:tomosibi

第35回   アパート
ひとしきり吐き終わるまで、真理恵はじっと俺を見下ろしていた。

そして、また言った。

「さ。いいから。付いて来てよ。実くん」
「教えろ。元通りにしろ。俺も、千春も」
「…悪いようにはしないから、さあ、付いて来なよ。実くん」

…これ以上真理恵は何も教えないつもりのようだ。
とりあえず、言うとおりにしてみようか。

真理恵は俺の手を引き、それ以上何も話さなくなった。
黙々と歩き出す。

てくてくてくてく。

「真理恵」
「…」
「…」
「…」

月が出てきた。

あぜ道を通り過ぎ。曲がりくねった田舎道を通り過ぎ。
下水の香りのする路地裏を何度も曲がった。

あ、民家だ。民家だ。

やっと見え始めた民家は、真夜中ということで、どこも明かりがついていない。

ん…この辺は、見覚えのある道だ。

あぁ、そうか。ここは。

思い出すフルコース。
椅子に体育座りの女が食わせてきた人魚の料理。
…千春のアパートに続く道。

やっぱり。
蔦の絡まる古い金属の建物。
人気の無いボロアパート。

「真理恵。ここは」
「うふ。懐かしい?この前来たところだよね?」
「千春さんの、アパート」

真理恵は首を横に振る。
「正確には、あたしのアパート」

え?


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