ひとしきり吐き終わるまで、真理恵はじっと俺を見下ろしていた。
そして、また言った。
「さ。いいから。付いて来てよ。実くん」 「教えろ。元通りにしろ。俺も、千春も」 「…悪いようにはしないから、さあ、付いて来なよ。実くん」
…これ以上真理恵は何も教えないつもりのようだ。 とりあえず、言うとおりにしてみようか。
真理恵は俺の手を引き、それ以上何も話さなくなった。 黙々と歩き出す。
てくてくてくてく。
「真理恵」 「…」 「…」 「…」
月が出てきた。
あぜ道を通り過ぎ。曲がりくねった田舎道を通り過ぎ。 下水の香りのする路地裏を何度も曲がった。
あ、民家だ。民家だ。
やっと見え始めた民家は、真夜中ということで、どこも明かりがついていない。
ん…この辺は、見覚えのある道だ。
あぁ、そうか。ここは。
思い出すフルコース。 椅子に体育座りの女が食わせてきた人魚の料理。 …千春のアパートに続く道。
やっぱり。 蔦の絡まる古い金属の建物。 人気の無いボロアパート。
「真理恵。ここは」 「うふ。懐かしい?この前来たところだよね?」 「千春さんの、アパート」
真理恵は首を横に振る。 「正確には、あたしのアパート」
え?
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