白い靴下。昔風のレースのついた白い靴下。そして、小さい足。軽い足音。
優しい月光が黄色く照らすセーラー服のこの上なく可愛らしいお嬢さんが、ゆっくりと歩み寄ってきてくださった。 俺のすぐ傍に。
天使のように微笑み、這い蹲る俺の肩にそっと手を置く。
「迷っちゃった。ごめんね。さ、次の場所に行こう?」
何らかの粘液にまみれている俺の視界の中、真理恵の優しい笑顔が眩しい。
真理恵はかがみ込んで、俺を目線を合わせた。 そして、彼女の柔らかな手は、ベトベトした俺の顔と、手に、躊躇なく触れてきた。
「真理恵、俺、人魚の肉を食ったせい?」 「…」
彼女は薄く微笑みを浮かべ、そして、俺の汚い唇にそっと口付けた。
俺は、黙って目を閉じていた。
真理恵はそっと体を離し、俺にこう言った。 「怖い?」
「うん」
「つらい?」
「うん」
立ち上がる彼女。 俺はまだ地面にうずくまる。
「あのさ、俺の、親父が、真理恵と、話したいって」 携帯を差し出した。
真理恵は眉毛を片方上げて、見下したような声をあげた。 「パパが?あたしと話したいって?」 「え?」 「やっぱり、怖いときには、娘に頼りたくなるものなのかしらね。男の人って」 「娘?」 「実くんのパパは、あたしのパパなの」 「?」
見上げると、真理恵のふっくらとした真っ赤な唇が、にーっ、と釣り上がって、笑った。
「立って。実くん。あなたに見せなくちゃならないこと、もう一つある」
真理恵の小さな手が俺の眼前に差し出される。
俺はその手を握って、ゆっくりと立ち上がった。
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