…おそるおそる左手で顔の右上に触れる。
ぴちゃ。 すぐ引っ込める。
ああ。ぶよぶよしていて人間の顔とは思えない肌触りだ。 鏡が無くてよかった。
朝からの体の不調、違和感。しんどさ。朦朧、がまた一層強くなった。 そのまま、体を蛍光灯の下に横たえる。 …怖い漫画とかだったらこのまま俺死ぬのかなあ。
……死ななかった。 5秒、5分、10分…、 俺の左目はしっかり見開き、飛びまわる蛾の濃い色彩を追い、 俺の両耳はかえって鋭敏になり、蛍光灯の発するジーーーーという音をキャッチし続ける。
このまま車が俺を退いて汚い頭を押しつぶしてくれればいいのに。 そう思って道路に身を投げ出してみたが、一向に車なんて通らない。
アスファルトにこびり付くねとねとした汚れ。 自分から発せられる腐臭。
一時間か二時間か。どのくらい時間がたったのだろう。
ゆっくりと、白い靴の、やさしい足音が、おれの傍にやってきた。
|
|