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作品名:汚水 作者:tomosibi

第31回   どろり
…おそるおそる左手で顔の右上に触れる。

ぴちゃ。 すぐ引っ込める。

ああ。ぶよぶよしていて人間の顔とは思えない肌触りだ。
鏡が無くてよかった。

朝からの体の不調、違和感。しんどさ。朦朧、がまた一層強くなった。
そのまま、体を蛍光灯の下に横たえる。
…怖い漫画とかだったらこのまま俺死ぬのかなあ。

……死ななかった。
5秒、5分、10分…、
俺の左目はしっかり見開き、飛びまわる蛾の濃い色彩を追い、
俺の両耳はかえって鋭敏になり、蛍光灯の発するジーーーーという音をキャッチし続ける。

このまま車が俺を退いて汚い頭を押しつぶしてくれればいいのに。
そう思って道路に身を投げ出してみたが、一向に車なんて通らない。

アスファルトにこびり付くねとねとした汚れ。
自分から発せられる腐臭。

一時間か二時間か。どのくらい時間がたったのだろう。

ゆっくりと、白い靴の、やさしい足音が、おれの傍にやってきた。


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