ぬらぬらと臭い汁でぬめっている俺の右手 で、まりえの細い肩を掴んだ。
「おい!!俺、どうなっちゃったんだよう!! 俺の手、俺の手が」 まりえが、うっ、と顔をしかめる。 「何だよ」 「みのるくん、おかしいのは手だけじゃないんだよ。 喋ると、すっごく、臭うんだってば。臭い!臭い!生臭い! くさい!くさい!汚い!汚い汚い汚いきたないきたない!!!!」 まりえは顔の前で大げさに手を振った。 そのヒステリックな動きに苛苛する。
そうかな、俺、やっぱり…、汚いのかな。
「腹黒いからじゃない?だから腐ったにおいがするんだ!」 けたけた笑うまりえ。 彼女の白い歯が、月明かりに照らされてきらきらする。
千春さんは相変わらず喚いている。
俺は色々なことがいっぺんに起こりすぎて、混乱している。
何なんだよ? 俺、どうなっちゃうんだよ。 何なんだよ、こいつら。 この女。 親父も母さんも様子が変だった。 俺のせい? 俺が何か悪いことしたせい? 千春と浮気したから? だって、仕方なくねえ? そもそも、まりえ。 まりえと付き合ったのが、まちがい?
暗い沼。
木々はもちろん答えてくれない。 汚水の人魚も答えてくれない。 俺は孤独。俺は今混乱している。
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