目を凝らす。 バシャバシャ汚水を叩く千春さんの手がおかしい。 月明かりを反射してぬらぬら光っているのだが、 どうも、両の手に、鱗が。 びっしりと、鱗が、生えているように見えるんだ。
「!!」
そういえば、俺の右の手。 乱暴に巻かれた白い包帯を見つめる。 まりえの手がそっとそれに触れる。
「みのるくん、手が大変なことになってたんだよね。 だから、私、がんばって手当てしたんだよ」 「おい、俺の右の手、いったい、どうなってるんだよ???」
たしか、夕方、倒れる寸前に、俺の手の甲にも、びっしり、鱗が。
…確認しなきゃ。怖くて、避けてたけど、確認しなきゃ。 俺の手、今どうなってる?
唾を飲む。ゆっくりと包帯を暴いていく。
テープを慎重に剥がし、何十にも巻かれたそれをほどいていく。 つるつるつる つるつるつる。
まりえがそれをじーっと見下ろす。
つるつるつる つるつるつる。
ようやく皮膚に近づく。と。
ずるり。
皮がずるり。
擦り傷を思いっきり膿ませちゃったことってある?そのガーゼ交換をしたことある? …それと似た感触が、右手全体を滑る。 鈍い痛みと不気味さにこわばる。
ずるずる。
「あぁ」
俺があぁって声を出してしまったのは、 あぁ、もうどうにもならないことが起こってしまった、という悲しみと諦めの声ね。
…右手の皮ぜんたいが、白い包帯とともに、ずるり、と俺の足元に落ちた。 腐ったゴム手袋のように簡単に、滑り落ちてしまった俺の皮膚。
そして、てかてかと光る手首から先には、
…あはは、びっしり、鱗だ。 鱗、鱗、鱗。
へびのうろこ。
俺の手は蛇の手。
まりえが、それを、じーっと見下ろす。
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