20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:汚水 作者:tomosibi

第26回   そういえば、俺の右の手
目を凝らす。
バシャバシャ汚水を叩く千春さんの手がおかしい。
月明かりを反射してぬらぬら光っているのだが、
どうも、両の手に、鱗が。
びっしりと、鱗が、生えているように見えるんだ。

「!!」

そういえば、俺の右の手。
乱暴に巻かれた白い包帯を見つめる。
まりえの手がそっとそれに触れる。

「みのるくん、手が大変なことになってたんだよね。
だから、私、がんばって手当てしたんだよ」
「おい、俺の右の手、いったい、どうなってるんだよ???」

たしか、夕方、倒れる寸前に、俺の手の甲にも、びっしり、鱗が。

…確認しなきゃ。怖くて、避けてたけど、確認しなきゃ。
俺の手、今どうなってる?

唾を飲む。ゆっくりと包帯を暴いていく。

テープを慎重に剥がし、何十にも巻かれたそれをほどいていく。
つるつるつる つるつるつる。

まりえがそれをじーっと見下ろす。

つるつるつる つるつるつる。

ようやく皮膚に近づく。と。




ずるり。

皮がずるり。

擦り傷を思いっきり膿ませちゃったことってある?そのガーゼ交換をしたことある?
…それと似た感触が、右手全体を滑る。
鈍い痛みと不気味さにこわばる。

ずるずる。

「あぁ」

俺があぁって声を出してしまったのは、
あぁ、もうどうにもならないことが起こってしまった、という悲しみと諦めの声ね。

…右手の皮ぜんたいが、白い包帯とともに、ずるり、と俺の足元に落ちた。
腐ったゴム手袋のように簡単に、滑り落ちてしまった俺の皮膚。

そして、てかてかと光る手首から先には、

…あはは、びっしり、鱗だ。
鱗、鱗、鱗。

へびのうろこ。

俺の手は蛇の手。

まりえが、それを、じーっと見下ろす。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1