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作品名:汚水 作者:tomosibi

第22回   包帯
まりえと父さんと母さんが全員居た。
俺が入室すると、
みんなはひどく緊張したようすで立ちあがり、
一斉にこっちを見た。

「まりえ、俺」
まりえは目を見開いている。

「母さん、…あれ?」
母さんの左半身には
あちこちに包帯が巻かれていた。
どうも、素人が無理に止血しようとした後みたい。
強く結ばれたそれには、ところどころ血がにじんでいる。
母さん、大怪我しているんじゃないのか?

「母さん、どうしたんだ、その怪我」
母さんに近づくと、部屋にはさらに緊張感が走る。
「病院は?」
もう一歩踏み出すと、全員が後ずさった。

「何だよ、みんな…」
手を伸ばして母さんに触れようとした瞬間、
母さんは大声を出して、パニックになった。

「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
動物の悲鳴みたいな絶叫をしながら、
かろうじて動く右手で、俺を払いのけ、突き飛ばし、
頭を左右に振りながら、
逃げていってしまった。

父さんは少し離れたところから、何も言わない。
まりえは父さんの隣で、笑ってる。

バタバタと廊下を走る音が聞こえた後で、
玄関のドアの開閉音が聞こえた。

「父さん」
父さんに向き直る。
父さんにも緊張感が走る。

「母さん出て行ったよ?」
父さんは青い顔をして何も言わない。

その表情から、
父さんの緊張感の正体は、恐怖だってことが分かった。

「何に怯えてるの、父さん。
今朝のことなら、謝るよ。
ごめんな」
そう言ったのに、父さんは聞いてない様子。

「来るな!!」
父さんは、まりえの後ろに隠れて、ぶるぶる震えてる。

はじめて見る様子だ。こんな父さんは見たくないや。

「父さん、そんなにまりえにくっつくなよ、彼女は俺の…」

「こいびと?」
まりえが始めて声を発した。
そして、父さんの後ろから、出てきて、俺に手を差し出す。

「行こうか、実くん。
色んなことを教えてあげるから」


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