いくつかの問いを発しようとした俺の言葉を遮って、 まりえが一段と大きな声でこう言った。
「それはさておき、実くんは、人殺しに疑われちゃうね」
えっ 何言ってるんだ、こいつ。
「千春さんは一日見つかってないだけじゃないか。 死んでるとか、まして殺されてるとか決め付けんなよ」 「あぁ、そうだったね。ごめん、ごめん」 まりえは屈託の無い笑顔を浮かべる。
「つい、私の中で、千春先輩はもう居ないものとしていたわ」 「お前、千春さんのこと嫌いなのか?」 「そんなこと無いわよう。 千春のこと嫌いじゃない。 私にとって問題だったのは 千春が、あなたのこと好きだったってことよ」 「お前、まさか、千春さんに何かしたわけじゃないよな?」 「私には千春先輩は殺せないわよー」 「だよな、まさか」 「だって千春先輩は殺しても死なない。 人魚の肉を食った、不老不死の女、だからね」 まりえはわざとらしくウインクをした。 あどけない少女のその表情が、 今の俺には非常に凶悪に見える。
その時始業チャイムが鳴った。 チャイムの音が不自然に歪む。
視界がグラっと揺れて 突然、思考が停止した。 …やばい、耳鳴りとめまいがしてきた。 やっぱり今日も体調が最悪だ。 このまま動き回っていると、倒れてしまいそうだ。
「俺、今日はもう、帰るわ…」 「ええ!もう帰っちゃうの? 放課後、見せたいものがあるって言ってるのにい」 「…ごめん、帰る」 「千春のアパートに行くつもり?」 「いや、家に帰る。でもまず病院に行く」
病院、と聞いてまりえは露骨に眉をしかめる。 「病院なんて行かなくっていいわよ」 「…何でお前がそんなこと言うんだよ」 「わかるからよ」 「…はあ、何が?」 「病院に行っても治らないからよ」
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