俺は黙ったまま、 皿の上のバター、卵、ベーコンを どさっと全部トーストの上に移し、べっとりケチャップをかけた。 そして、それを乱暴に二つ折りにして齧り付いた。
「やめなさい、お行儀の悪いこと」 母さんが苛苛する。 「こぼすわよ」
その言葉通り、トーストの反対側から、 具をズルズルこぼしてしまった。 それらは、混ざり合った血と膿のように流れ落ちた。
「乱暴に食うからだ。馬鹿」 父さんも苛苛してる。
…なんだよ。 てめえらが俺を乱暴にさせてるんじゃねえか…。
「なあ、父さん」 「何だ。お前、テーブルを拭け」 「あの子って誰だよ。若い可愛い子ちゃん。俺にも紹介してくれよ」
空気が凍った。
母さんが青くなって、 コウモリみたいな声をあげる。 「な、何のことよ」
ふん。 「教えろよ。昨日話してたじゃねえか。 不用心にでかい声だすから全部聞いちまった」
全部、てのはハッタリだったが、 俺の言葉は予想外の混乱をわが家にもたらした。
母さんは血と膿を拭いていた布巾を放り投げて キィっとヒステリーを起こし 父さんは薄暗い顔色になって 殺意を起こしながら俺に近づいてきた。
俺はやべ、と思って鞄を掴み すぐさま家を出た。
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