夜。
最高に体調が悪くなって目を覚ました。 関節が痛い。熱を持っている。 体中がむずむずする。
ドア越しに父と母の声が聞こえてくる。 何か言い争っているようだ。 俺がいつも目にする円満な夫婦の様子からは想像できないような 殺伐とした口調。
聞こえにくいので少しだけドアを開いてみる。 「死んだらしいですね」 「…」 「で、あの子はどうするんです。約束の年齢は過ぎていますけど」 「放っておくわけにはいかないだろう」 「今まで放ってきたじゃないですか」 「ちゃんと金は出してきた」 「あの子が年頃になったから、可愛いだけじゃないんですか。 だってあなた若い女が好きなんでしょう。見境の無い…」 「黙れ。殺すぞ」 「大声を出さないで。実が起きます」 俺は戸を閉めた。
体調が最悪なのでもう眠れないかも、と思っていたのだが 俺の精神は非常に疲れていたようで 生暖かい布団の中で、 いつのまにか意識を失っていた。
朝。 家族の食卓。 トーストにハム、ベーコン。この食卓には魚は無い。 「実、おはよう」 俺の前では夫婦は明るくふるまっているが、 俺は昨日の様子を忘れない。 父さんや母さんが言ってた「あの子」って、誰なんだろう?
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