登校すると、やたらにまりえの機嫌がいい。 「おはよう、実くん!」 「お、おう。どうした、元気だな」 「うふふふ。良いことあったんだよ」
午前中も彼女はやたらに元気だった。 俺の静けさとは反対に、やたら話しかけてくる。 機嫌がいいというより、ハイになっている気がした。
昼休み。 俺は中庭で、いつもまりえと食う。 「お、今日は弁当持ってきたのか」 「うん!自分で作ったの!」 ニコニコしながらでかい風呂敷を開ける。
普段なら、 俺はいつも母さんの手作り弁当。だけど、まりえは、いつも購買でパンを買ってた。 うちは貧乏だから〜、といいながらいつも一番安いコッペパンを選んで、ニコニコしながら食ってた。 実くんはいいなあ、お母さんが作ってくれて、ってよく羨ましがられてたんだけど。 やっと家庭的になって来たのかね?可愛いじゃん。
「これは、実くんのぶん!」 膝の上にぽん、と置かれる。結構でかい弁当箱だ。 「お、俺の分も作って来てくれたのか。ありがとう」 母さんの弁当もあるんだけどな〜、と一瞬迷っていると、 すかさずまりえが口を出してきた。 「私のほう食べてよう。お母さんのはいつもいつも食べてるじゃない。今日ぐらい…」 「はいはい、わかったよ、じゃあ開けるぞ」 まりえの持ってきた弁当の中には、フライがたくさん入っていた。 ガーリックの匂いがする。
「実くん、食べて食べて〜」 「おう、ありがとう」
一口食べ、二口食べているうちに、違和感を感じた。 …生臭いぞ。
「まりえ、これ、何ていう魚だ?」 まりえは微笑んだ。 「人魚」
ゲホッ 咳き込む俺の背中をトントン、と叩いて、お茶をくれた。
「冗談だよ、冗談。そんなわけないでしょ。 白身魚のフライだよ」 「そうだよな、お前は千春さんじゃないもんな」
…が、食べ続けているうちに、気持ちが悪くてたまらなくなった。 やっぱり、これ、前に食ったのと同じ魚じゃねえか!? グニュグニュとした歯触り。 謎の不安感で口の中の感覚が痺れてくる。
「まりえ、ごめん、俺、もういいや」 「疑ってるの?」 「そうじゃないけど、気分が悪いんだ」 「ふーん」
まりえは俺の様子をじっと見ている。 「実くん、吐かないでね」 「えっ」 「せっかく作ったんだもん。やっぱり食べてほしいな。 ね、こっちの煮物は食べられるでしょ。」
まりえは有無を言わさずに俺の口におかずを入れてくる。
俺は暫く我慢していたが、半分ぐらいでギブアップした。 まりえは悲しそうな顔をした。 まるで自分自身が拒否されたような顔をするから、 俺は戸惑った。
チャイムが鳴るまで何となく気まずい昼休みを過ごした。
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