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作品名:汚水 作者:tomosibi

第10回   お弁当
登校すると、やたらにまりえの機嫌がいい。
「おはよう、実くん!」
「お、おう。どうした、元気だな」
「うふふふ。良いことあったんだよ」

午前中も彼女はやたらに元気だった。
俺の静けさとは反対に、やたら話しかけてくる。
機嫌がいいというより、ハイになっている気がした。

昼休み。
俺は中庭で、いつもまりえと食う。
「お、今日は弁当持ってきたのか」
「うん!自分で作ったの!」
ニコニコしながらでかい風呂敷を開ける。

普段なら、
俺はいつも母さんの手作り弁当。だけど、まりえは、いつも購買でパンを買ってた。
うちは貧乏だから〜、といいながらいつも一番安いコッペパンを選んで、ニコニコしながら食ってた。
実くんはいいなあ、お母さんが作ってくれて、ってよく羨ましがられてたんだけど。
やっと家庭的になって来たのかね?可愛いじゃん。

「これは、実くんのぶん!」
膝の上にぽん、と置かれる。結構でかい弁当箱だ。
「お、俺の分も作って来てくれたのか。ありがとう」
母さんの弁当もあるんだけどな〜、と一瞬迷っていると、
すかさずまりえが口を出してきた。
「私のほう食べてよう。お母さんのはいつもいつも食べてるじゃない。今日ぐらい…」
「はいはい、わかったよ、じゃあ開けるぞ」
まりえの持ってきた弁当の中には、フライがたくさん入っていた。
ガーリックの匂いがする。

「実くん、食べて食べて〜」
「おう、ありがとう」

一口食べ、二口食べているうちに、違和感を感じた。
…生臭いぞ。

「まりえ、これ、何ていう魚だ?」
まりえは微笑んだ。
「人魚」

ゲホッ
咳き込む俺の背中をトントン、と叩いて、お茶をくれた。

「冗談だよ、冗談。そんなわけないでしょ。
白身魚のフライだよ」
「そうだよな、お前は千春さんじゃないもんな」

…が、食べ続けているうちに、気持ちが悪くてたまらなくなった。
やっぱり、これ、前に食ったのと同じ魚じゃねえか!?
グニュグニュとした歯触り。
謎の不安感で口の中の感覚が痺れてくる。

「まりえ、ごめん、俺、もういいや」
「疑ってるの?」
「そうじゃないけど、気分が悪いんだ」
「ふーん」

まりえは俺の様子をじっと見ている。
「実くん、吐かないでね」
「えっ」
「せっかく作ったんだもん。やっぱり食べてほしいな。
ね、こっちの煮物は食べられるでしょ。」

まりえは有無を言わさずに俺の口におかずを入れてくる。

俺は暫く我慢していたが、半分ぐらいでギブアップした。
まりえは悲しそうな顔をした。
まるで自分自身が拒否されたような顔をするから、
俺は戸惑った。

チャイムが鳴るまで何となく気まずい昼休みを過ごした。


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