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作品名:世界の終わり 作者:yN

第1回   プロローグ
「世界が終わる前にすることって何かある?」
くだらない質問ばかりして来る奴がいる。質問の内容がいつも同じで、特にそれに意味があるとも思えないような質問。
だから僕は同じようなテンプレートを作っていて、それに乗っ取って返事を返す。
それはテンプレートだから長文になることもあるし『さぁね』とか『君ならどうしたい?』とか、また無意味な返答になる。ランダムに選ばれた言葉は僕の口を離れるたびに僕の心を重くする。

無意味に春だった。
世界の終わりは唐突にやってきて、そして僕らを飲み込む。
それが意味のある言葉だったとは知らされないままに、僕らの人生は終わる。
誰の手によって握りつぶされ、そしてゴミ箱に捨てられたのかもわからない。
音がしたのだろうか?
悲鳴は上げる人がいただろうか?
誰かは、意識をしたのだろうか?

静かに静かに世界は終わってしまった。
春に。

今は夏だけれど、世界は終わってしまったのだ。
語り手の僕は誰なのか?
僕自身誰なのかはわからない。
自分自身でも驚くほど、要領を得ない。知識がけはあり、そして知覚することが出来る。
言葉を紡ぐことが出来て、そして世界が終わってしまったことを知っている。
それでも僕自身が何者であるのかはわからない。
知らなくていいと思っている。
知らないで、そうすることが保身みたいになってしまっていることは何となくわかっている。

ヒトみたい。
僕は、そんな意識を持った本能のようなモノで、自分自身を失いたくないと思っているような、そんな気がする。
僕はヒトなんだろうか?
そんな疑問がふと頭をよぎる。
しかし僕はどこかにいる僕がその言葉を言語道断で一蹴する、僕の教習は闇の彼方へと、永遠の時間をかけて屠られる。
ナニモノでもない僕は、このようにして語り口を入れることしかできない無力な存在なのだ。(もちろん制限事項の中だけにしか僕はいない、意識の境界外はエラーを返してくる)
それでも僕は結局のところどこかには存在しているのだろう。
今のところ僕にはそれしかわからない。


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