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作品名:マンガ喫茶だより ペンテコステ編 作者:樸 念仁

第8回   一寸の虫跡にも


若菜の男嫌いは転校直後から始まった話なので、Aを恋人に持ったことと直接的な関係はない。

ミッションスクールでは同性の、どちらかというと良家の子とばかり机を並べて勉強してきた。それがいきなり男も女もなく、玉と言わず石と言わずまぜこぜにされる。

制服さえない。何よりも迷惑したのはしかし、生徒間のいちゃつきが極めてオープンに行われるという、この一事だった。

若菜にすれば又ノイローゼになってもよい場合である。前に患っておいたのが多少免疫になったのでもあろうか。

で、本能的に用いた予防法が、異性に対する無関心だったのである。男嫌いになることだったのである。

我々は、そういう彼女が、Aとらぶらぶ関係になったところを見ている。だから、左様な男嫌いがにせものであることを知っている。

察すれば、無関心を決め込むことで、自己のプライドを保護する緩衝装置としたのに違いない。へええ、you程度の子でもカレシが欲しいわけ?言われた時の事を想像するだけで、乙女心はおののいたろう。そのくらいならいっそ女の子でなくなりたかったろう。

いうように、男嫌いは転校した直後から、つまり、七年生に編入されるなり早々と取った態度だった。クラスには随分良い仲になっているペアが数組出来上がっており、見ると、みんなまだそんな小便臭いふうのくせにして、登下校するのに手をつないで出入している。

いや、みんながみんなそんな不良だという意味ではない。だったら大変だ。けれども、少数とは言いながら、公園のベンチで、駅のホームで、電車の中でと、抱擁の接吻のアイラヴyouのと、始末におえないのがいる、これもまた事実だ。くどいようだが、七年生である。中学一年生である。

若菜にしても内心そういうことに全然興味がないではなかった。ただ、「Youは誰かが好きじゃないの?」と聞きでもしようものなら、決まって「うちは別に?」と、例のつれなげな返事をするだけなのだった。


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