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作品名:マンガ喫茶だより アマポラ編 作者:樸 念仁

第6回   彼女は隠れエレコン派?


一説にいう。女の子は皆エレクトラ・コンプレックスであると。皆父親に恋をする。

それが中学へ上がる年齢に達すると、にわかにうざったく感じるようになり、くさく思うようになる。この変心には、娘の方にも言い分がある。

写真で見ると昔はあんなにかっこよかったパパも、今では馬鹿みたいに体重が増えている。何をいうにも独特なノネナールの香は、一緒にいると移りそうで、なるたけ離れていたい。ママにしてからがパパはくさくてかなわないと言っている。

以上二点、潮智彦も例外ではなかった。

若菜も幼かった日、十才ぐらいまでは、妹とアルバムをめくりつつ

「パパってE口Y介に似てない?」

とそんなたわいない話をしたものだった。その後、智彦の体はだぶつき、例の臭いを醸した。

けれども、若菜にとり恨めしいのはそんなことではなかった。全然それとは違った。

彼女は母親を憎むのと同じ理由で父親をも憎んだのである。つまり、二人には美男であり美女であってほしくなかった。どうせなら不男と不女が良かった。

それはまたどういうわけなのだというと、簡単である。

非常に美しく設計された建造物、例えばアクロポリスの丘なるパルテノン神殿でも良いし、山口市の五重の塔でも良い。或いはまた、見事に巧まれた庭園芸術、一例がヴェルサイユのそれ、でなければ京都大仙院のそれでも構わない。

そういう、人工美の極致ともいえる傑作に、その絶妙な均整の上に成り立っている美に、何かしら調和を掻き乱すようなイタズラをしたならば、結果はどうであろう。恐らく、元々が完全なだけに、ぶちこわしの効果は甚だしいものであるに違いない。

早い話がマクドナルドのハンバーガーだ。どんなにケチャップをかけて食おうが、マスタードをのせて楽しもうが、前と後とで根本的な味の差は感じられない。最高級の松阪牛でつくったステーキの場合、そうは行かない。コショウのふりかた一つで出来不出来が決まる。

それと同じである。


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