「では、どうされるつもりですか?」
「んーん、ひとまず新しい宿を探しますか、ドリンクバーが無料で利用できる。今度はシャワーのあるとこがいいね。噂じゃシャワーに入れるタイプがあるんだってさ」
「新しい宿と言ったって」
「若菜さんも勧めてくれたカマダの何とかいう店、一度調べてみるかな、安いんで有名らしいから。支店が世田谷にもあればいいんだけど」
「全然力になってもらえそうな感じではないんですか?」
「難しい所だね。社宅に入ってよろしくやっているようなことを言っちゃったんだから。那須江さんの手前、住所不定無職になったとは言いだしにくくてさ。八王子の前住所を教えておいた。俺って見栄っ張りだよなあ」
「仲直りの方はうまく行ったんですか?」
「まあ、たまに昼飯を食うぐらいにはね。一文にだってなりゃしない。本当のことを知ったら、今度は義絶だ、僕おそらく」
「喜んでいる場合ではないですよ?岩村さん」
「分かってる。しかしね、しようがないね。那須江さんは想定の範囲外ってやつだった。年なんか俺と大して違わないんだからね。よくやったもんだ」
「お父様だって人間です。お一人では心細いんです。寂しいんです、きっと」
「へえ、面目次第もないことで」
「もとはといえば誰が悪いんでしょうか」
「僕です」
「そうなんですか?」
「はい」
「でも、私だってまったく同じですから。一緒に悩んで上げられると思いますよ?岩村さんのことを責めずに」
「まじでありますか。そうして頂けるなら僕は幸いなること甚だしく涙がちょちょぎれてちょべりグー」
「岩村さん、分かっているんですか?本当に!」
「はい、分かっております」
「何だかからかわれているような気がします」
「ごめん。僕が若菜さんをからかうわけがないよ。あのさあ、若菜さんこれから何してる?杉並にいる系?それとも世田谷に戻る系?」
「もう戻っています。会いますか?」
「会って頂けますでしょうか」
「もちろん。喜んで」
|
|