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作品名:マンガ喫茶だより:ザ世田谷コネクション 作者:樸 念仁

第1回   From Setagaya with Love

アラキさん、恐れないで。

恐れは迷いを生みます。

迷いは恐れを生みます。

私は、この世に生きる時間は取るにたりないほど価値の少ない、つまらない物だと知っています。

私達は、人生の夢とか希望とかを叶えたとしても、たくさんの財産を作ったとしても、人を助け尊敬されるとしても、好きな人と一緒になり、平和な家庭を築いたとしても、人に祝福される幸福な人生を全うしたとしても、それにどれほどの価値があると言うのでしょう。 

人生の夢とか希望とかを叶えられなかったとしても、僅かな財産をも作れなかったとしても、人に無視されいわゆる「負け組」で終るとしても、それにどれほどの損害があると言うのでしょう。

私達は生きてもたかだか百年。後は誰も思い出してもくれません。幸福だったか不幸だったか、生き残った人にはどうせ関係ない話ではないでしょうか。

例えば、有名な映画スターが亡くなったとします。有名な科学者でもかまいません。人生においてはあらゆる名誉を受け、人に幸福な一生と羨ましがられました。死んでしまった今となっては、誰が思い出してくれるでしょうか。

せいぜい五年か十年か、ごく親しかった人達だけが思い出すだけで、後はおしまいです。三十年後にはほとんど誰も覚えていません。この事では、「勝ち組」の人も「負け組」の人も平等です。三十年後には平等に忘れ去られ、どっちが幸福な人だったか、どっちが不幸な人だったか、生き残っている人達にはどうでも良いことです。どうせ他人です。

ある有名な雑誌で、アインシュタインは二十世紀の最も重要な人物に選ばれました。アインシュタインさんの事を毎日思い出している人が、今、世界に何人いるでしょうか。彼が幸福な一生を送ったかどうかを考える人が、何人いるでしょうか。アインシュタインさんでさえもこの程度です。まして平均的な人の人生などに、生きる価値がどれほどあると言うのでしょうか。

人生は生きる事自体に最高の価値があると言われます。・・・・・勿論、それは単なるスローガンに過ぎません。誰もが心の中では嘘だと分かっています。みんな、実は空々しい嘘だと思っているのではないでしょうか。

こんな人生ですから、せいぜい「勝ち組」にでもなって、毎日を楽しく贅沢に生きるのでなければ、馬鹿馬鹿しくてやっていられません。

これが今の世界の実情ではないでしょうか。「勝ち組」と「負け組」に分かれて行くのは驚くべき現象ではないし、食い止めようもありません。

ひどい事を言います。間違いなく「負け組」に属するアラキさんは、生きていたってどうって事はないので、やっていられないはずです。

どうせそんな人生、捨てたって良いではないですか。一度死んでみてはいかがですか?

私も死にました。




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