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作品名:マンガ喫茶だより、第2セマーナ。 作者:樸 念仁

第1回   1
 ひどい話だね。
 考えさせられるよ。
 どういうことがあるのかは知らないけどさ。・・・
 世の中が悪いのかな。
 なんとも言えない暗い気分だよ、こっちまで。





やっぱり当たっちまった、バチが。
 日時が符合するから。
 本のタイトルを考えながらすき家の丼を味わっていた時のこと、妙な音がしたんだよ。

「ぴし」

 小さな音。人には聞こえない。樸にだけ聞こえる。
 ぴしまで行かないかもしれない。
ぴぐらいだったかも。
でも樸には聞こえた。
 聞こえた時に「もしかしたら」と思った。前にも聞いたことがある音。十五年ほど前に。
 それは枝豆を食べている時に聞いて、しばらくすると物が食べられないぐらいに痛くなって、奥歯を一本抜くことになった。
 歯医者が言うには、歯が割れて、スキマからバイキンが入った。ハグキの中にウミがたまっている。だからハレて痛いのだと。こうなれば、あとは抜くしかない。
 証拠のレントゲン写真まで見せてもらった。
 言うとおり、歯は二つに割れていた。ちゃんとハグキに植わってることは植わってるんだが、根っこから真っ二つに割れたのが、写真に写ってる。金属をかぶせた右の奥歯だ。
 そして医者が言うのに、君の歯は私の技術をもってしては治しようがない、治しようがないけれども、ひとつの方法として、今抜いてしまうのももったいない話だから、割れたまま使ったらどうか。使えるうちは使えるだけ使う。ただし、そうするとちょっと痛いかもしれないよ。特に疲れた時なんか、歯が浮いたようになって、とても痛いかもしれない。そういう時は痛み止めの薬を飲んで、我慢することだ。まあ、いずれ我慢できなくなって、抜くことにはなるのだろうけれど。と。
 樸は痛みに対して弱い。その時も、確か一週間ぐらいで我慢できなくなって、抜いてもらいにいった。
 同じパターンをたどっている。
 牛丼に入っていたスジニクの小片をかんだ瞬間、

「ぴ」

 と耳の奥で聞こえた。
 しかも、今回は金属をかぶせた歯ではなくて、以前かぶせてあった金属が去年とれて、歯医者に行くだけの金がなかったのか、それともただ行きたくなかっただけなのか、忘れてしまったけれども、そのままホウチして、現在に至った一本なのだ。かなり深く掘ってある。
 今朝は大変にハレていた。
 ちょっと人相が違うほどに。
 痛いのは昨日の夕方ごろ始まって、自転車をこいでいる時は忘れるけれども、休んでいるとズッキンズッキンくる。
 昨夜は痛みを忘れようと、ヨフカシしてキーボードでパチパチやった。ほかの事に集中している間は、痛みが少しだけやわらぐ。
 今は痛い。非常に痛い。ハレは今朝ほどでないけれど。でも、また明日の朝になったら物すごくハレるのかもしれない。
 わざわざ買った痛み止めの薬も効果がないのらしい。
 明日は医者に行くようだ。
 ゆいいつ救いと言えば、まだ保険証の有効期限が切れてないこと。
 保険料をおさめてないのだから、没収されてしかるべきものなのだけれど、たぶん使えると思う。
 今日、歯医者の看板が出ているところを見て回った。どこも休診だ、予期したとおり。
 樸は悪いことはできない。
なぜだろう、昔から、何か悪いことをするとすぐにバチがあたるのだ。そうでないやつだって大勢いるのに。
神様にうらまれているのかね。
本当に損だ。
おまけに明日は午後から雨。
なんか、とても憂鬱だ。
いやな、いやな気分だ。


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