今日は嫌な天気だったね。風が吹いてて、寒くて。 台風がどっか近くを通っていったとかで。 これからツユの季節、タイヨウの季節、タイフウの季節。嬉しくない季節のオンパレードだ。 季節がヘンカしない土地へ行ってみたい。ハワイなんかいいだろうな。タヒチもよさげ。ポール=ゴーギャンか。・・・いったいムネヒト=アラキはどこへゆくのか。 図書館があくまで行くところがないのはミジメだ。とくに今日みたいな天候では。 五時には出なくちゃなんないし、出なきゃまた高くつくし、図書館は九時半開館だし、どうするよ。 吉野家でネバってみようと思ったけど、おなかがすいていたもんだからギュウドンナミイッチョウは二分でなくなっちゃった。 なにしろ夕べはケンヤクするつもりで、ドリンクバーでガマンした。コーンポタージュ風の温ったか飲み物を何杯もオカワリして。今も頂いてるけど、なかなかいけますよ、このドリンクは。おなかにたまりそうな感じで。 でも、さすがに今朝はペコペコ。ひとばん何も食べないんだからね。いくらポタージュ風ったって、そうヤスヤスと腹の虫は胡麻菓されませんよ。 二分でイブクロにおさめてお茶をすすっていたら、こっちが何も言わないのに、
「お勘定ですか?」
まるで早く出ていってほしいみたいに。 オカンジョウデスカと言われちゃ、こっちだってイエマダデスとは言えないじゃないか。
「はい、お願いします」
樸の損なところだ。この期に及んでまだミエをはらずにはいられない。イエマダデスと言ったらいいじゃないか。勘定を払ったにしたって、一時間でも二時間でも好きなだけいればいい。 けれどもカッコ悪いから、
「ごっそうさーん!」
これから行き先があるようなイセイの良い声を放って、雨と風に当たりに店を出た。 マヌケですよ、どう見たって。大きな荷物を背負っちゃって、先週公園のトイレで拾った白いビニール傘をさして、さてどこへ行こうかムネヒトアラキ。 とりあえずコンビニでタチヨミ。テンインにはいかにもエイギョウボウガイといった顔をされる。何たってカタツムリみたいな恰好をしてるんだからしょうがない。 体が少しニオったのかもしれない。きのうは銭湯が休みだった。 がんばって三十分ほどタチヨミしたけれど、それ以上は図々しくなれなくて、また外に出た。 駅があったっけ。そうだ。駅があるじゃないか。駅だ駅だ。駅へゆこう。あそこなら図書館も近い。 ってなわけで、カイサツの前のマチアワセバショで三時間と二十分、荷物の上にどっかと腰をおろして、待ち人でもあるかのような顔をして、ちょいとハイシャクしてきたミシュランの東京版を出して、読んだ。できるだけ通勤通学の客たちを見上げないようにして。 ゴカイしてもらっては困るが、ミシュランガイドは本当にハイシャクしただけ。ヌスム気なんかさらさらない。どうせ今晩もって帰るんだから。ゲンにもって帰って来たんだから。 図書館は見るのは自由だけど借りれない。住所をショウメイするものがないとカシダシができないのだ。ジュウミンヒョウだって八王子にあるんだし、八王子市民には貸してくれない。八王子のジュウミンヒョウからしてマッショウされてる可能性がある。コクミンホケンとかゼイキンなんかぜんぜん払ってないんだから。非コクミンだな、これは。 図書館じゃ借りれないから、ここのコレクションをハイシャクすることにしている。 けさ出かける時に本棚を見たらホームレス中学生があった。ミシュランガイドにしようか、それともホームレス中学生にしようか、迷ったんだけれど、ホームレス中学生はカクレて読むもんだと気がついて、ミシュランガイドを選んだ。でももう一生エンがないレストランの案内なのかもしれない、樸的に言って。 だからホームレス中学生はまだ読んでないけれど、そして今は誰かほかの利用者が借りてるらしくて本棚にはないようだったけれど、あの小説では先をこされた。 本当は樸がベストセラーを書く予定だったのに。すてきなタイトルまで決めてあった。
屋根の下のホームレス
カイシンの作になるはずだった。 ハケンの仕事は職場の雰囲気が何となく樸の首を切りたがってる。どうもクモユキがやばそうな感じになってきた去年の初めごろ、帰りの電車に揺られながら浮かんだタイトルだ。 その後、本当に切られちゃって、それから飲食店の夜のバイトは思ったより大変で、公称「社宅」の安アパートに引っ越すのなんかでもバタバタしていたから、つい書くひまがなかった。 知らないうちにホームレス中学生と題する書物がジンコウにカイシャするようになって、あの時はしまったと思ったね。 今さら屋根の下のホームレスじゃね。パクったと思われるのがオチだ。ホームレス中学生よりは屋根の下のホームレスの方が数段うえだと思うんだけど。ずっと文学的だと。タイトル的に言って。
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