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作品名:マンガ喫茶だより 作者:樸 念仁

第1回   タバコが眠れない
 酒なら飲みたい。けむたいのはごめんだ。
 小さい時分からタバコの煙が何よりも苦手なんだ。鼻にツンツンきて頭が痛いし、疲れてる時なんかハキケがする。
 おやじは吸わなかった。おふくろが日に二箱もやるヘビースモーカーで、息が非常に臭かった。クワエタバコなんかしていると逃げて歩いたもんだ。

「母さん!タバコは庭に出てやってよ!僕の部屋にそんなものを持ったまんま入って来ないで!!」

 よくどなったっけ。おふくろも四年前に死んじゃった。それからずっと下り坂だ。
 おやじには出て行けと言われる。だから三年も会ってない。生きてるのやら死んでるのやら。
 八年もやったハケンの仕事は去年解雇になる。
 そのあと見つけた飲食店の夜のバイトも先々週でクビ。エンキョクな言い方ではあったけれど、要するに、あんたはトシのとりすぎで時代についていけてないオッサンだから、やっぱり使えない。そういうことだったらしい。
 んならハナっから雇うなって。研修だとかって、悲しくなるほど安い賃金でさ、さんざっぱら人をアゴで使っておきながら。
 あの店長いくつだ。二十五六だな、あれは。
 小僧みたいなやつにコキ使われるのは愉快なもんじゃないな。
 でも、しばらく食いつないだんだから、まいっか。
 これからですよ、困っちゃうのは。困ってしまいますよ?この私は。困った困ったと。
 ところで臭いな。
 ツンツンするのはどっから入ってくるんだ。
 たまらないな、まったく。1800円も払ってるのに。よけい眠れないじゃないか。隣のやつはイビキをかいてるし。よく平気でいられるな。
 空調システムが喫煙室とつながってるのかな。
 いやんなっちゃうな、もう。


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