20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:九十九神 作者:華月

第8回   8
 食べ終えた時、2人はそろってご馳走様と手を合わせる。
「おいしかったです」
「よかったね」
「うん」
「で、もっかい聞くけど」
「うん?」
「どうやって来ちゃったの?」
 質問内容が変わっている事に安堵しながら、真那は先程の事を話し始めた。
「家に帰ったら、遠遣って人がいて・・・」
 真那は自分で話しながらも、信じられないような事の連続が起きていたんだと改めて感じた。
 そして青年はそんな真那の話を、遮る事なく全部聞いてくれた。
「それで、気付いたらここにいたの」
「ふ〜ん」
 話が終わると、青年は何かを考え始めてしまった。
「?あの・・・、」
「その遠遣っていう人はさぁ、」
「うん」
 何か言おうとした真那を遮って、青年は真那に聞く。
「お前を俺に会わせたいって言ってたんだろ?」
「あ、うん・・・」
「何で俺に会わせたいのか、言ってなかったのか?」
 その言葉に、真那も不思議に思った。
「ううん。何にも言ってなかった」
「そう・・・」
 何故だろう。なぜ遠遣は自分とこの人を会わせようとしたのだろう。
「ま、いっか」
「えっ?」
 いきなり青年がそう言い、2人の皿を持ってまたドアの向こうへ行ってしまった。
「・・・」
 いっか、で済まされるような事ではないと思うが、本当に気にしてなかった。本当に不思議な人だ、と真那はしみじみ思った。
 皿を置いてきた青年が再び戻ってきた。
「俺は白石大輝」
「えっ?」
 いきなりそう言われて、真那は気の抜けた声が出る。
「名前。もしかしたらこれからも会う事になるかも、だし」
 言われた事を理解した真那は、確かにと納得して大輝に向き直って言う。
「私は深野真那。よろしくお願いします」
「ふかや、って、変わった名前だな」
「うん、よく言われる」
「なんか聞いた事もある気がするけど・・・」
「そう?」
「うん・・・」
 それからしばらく2人は互いの事を話した。大輝は専門学生だとか、真那も料理が好きだとか。
 そんな事を話していたら、真那はふとある気配を感じた。
「・・・遠遣?」
『よく気付いたな』
「まあね」
 やはり。なぜかは分からないが、先程までは感じなかった気配、それもさっきまで会っていた人間の気配を感じたのだ。遠遣しかいない。
 あらぬ方向を向いて話し始めた真那を、大輝は不思議そうな目で見つめる。大輝には遠遣の声が聞こえない。しかし、真那の様子から見て、彼と話しているのだと分かる。
 そんな大輝を置いて、2人は話を続ける。
「どうしたの?」
『そろそろ帰るぞ』
「えっ?」
「何?」
 驚いて大きな声を出した真那に、それまで成り行きを見守っていた大輝が口を挟む。
「帰るって」
「帰る?」
『いくぞ』
「え、待って。急に・・・!」
 全て言い終わる前に、真那は自分の体が浮くのをまた感じた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 19