食べ終えた時、2人はそろってご馳走様と手を合わせる。 「おいしかったです」 「よかったね」 「うん」 「で、もっかい聞くけど」 「うん?」 「どうやって来ちゃったの?」 質問内容が変わっている事に安堵しながら、真那は先程の事を話し始めた。 「家に帰ったら、遠遣って人がいて・・・」 真那は自分で話しながらも、信じられないような事の連続が起きていたんだと改めて感じた。 そして青年はそんな真那の話を、遮る事なく全部聞いてくれた。 「それで、気付いたらここにいたの」 「ふ〜ん」 話が終わると、青年は何かを考え始めてしまった。 「?あの・・・、」 「その遠遣っていう人はさぁ、」 「うん」 何か言おうとした真那を遮って、青年は真那に聞く。 「お前を俺に会わせたいって言ってたんだろ?」 「あ、うん・・・」 「何で俺に会わせたいのか、言ってなかったのか?」 その言葉に、真那も不思議に思った。 「ううん。何にも言ってなかった」 「そう・・・」 何故だろう。なぜ遠遣は自分とこの人を会わせようとしたのだろう。 「ま、いっか」 「えっ?」 いきなり青年がそう言い、2人の皿を持ってまたドアの向こうへ行ってしまった。 「・・・」 いっか、で済まされるような事ではないと思うが、本当に気にしてなかった。本当に不思議な人だ、と真那はしみじみ思った。 皿を置いてきた青年が再び戻ってきた。 「俺は白石大輝」 「えっ?」 いきなりそう言われて、真那は気の抜けた声が出る。 「名前。もしかしたらこれからも会う事になるかも、だし」 言われた事を理解した真那は、確かにと納得して大輝に向き直って言う。 「私は深野真那。よろしくお願いします」 「ふかや、って、変わった名前だな」 「うん、よく言われる」 「なんか聞いた事もある気がするけど・・・」 「そう?」 「うん・・・」 それからしばらく2人は互いの事を話した。大輝は専門学生だとか、真那も料理が好きだとか。 そんな事を話していたら、真那はふとある気配を感じた。 「・・・遠遣?」 『よく気付いたな』 「まあね」 やはり。なぜかは分からないが、先程までは感じなかった気配、それもさっきまで会っていた人間の気配を感じたのだ。遠遣しかいない。 あらぬ方向を向いて話し始めた真那を、大輝は不思議そうな目で見つめる。大輝には遠遣の声が聞こえない。しかし、真那の様子から見て、彼と話しているのだと分かる。 そんな大輝を置いて、2人は話を続ける。 「どうしたの?」 『そろそろ帰るぞ』 「えっ?」 「何?」 驚いて大きな声を出した真那に、それまで成り行きを見守っていた大輝が口を挟む。 「帰るって」 「帰る?」 『いくぞ』 「え、待って。急に・・・!」 全て言い終わる前に、真那は自分の体が浮くのをまた感じた。
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