驚いて固まる真那に対し、入ってきた青年も真那を見て固まった。 「何、あんた?」 「なに、って・・・」 「どうやって入ったの?」 この会話にデジャヴを感じるなぁ、と真那は思った。そんな真那を見て、青年は聞く。 「泥棒じゃないよな?」 「違います」 先程とは違い間髪入れずに答える。泥棒などと間違われるのは嫌だ。 その答えにふ〜んと頷き、青年は小さな声で言う。 「じゃあ、お邪魔します」 ここはあなたの部屋ですが。そう言おうとしたが、それは飲み込んだ。 ベッドに座り、たぶん自分で作ったのであろうパスタを机の上に置き、青年は真那を振り返る。 「で、なんでここにいるの?」 「さぁ・・・?」 「はっ?」 「私も何でか・・・。気付いたらここに・・・」 我ながら、なんて間抜けな答えだろう。そう後悔した真那だが、青年は驚くほど意外な答えを返した。 「そう」 「えっ?」 驚いて声が裏返った真那に、青年も驚いた表情になる。 「何?」 「それだけ?」 「それだけって?」 心底不思議そうに聞いてくる青年に、真那は自分が間違っている事を言っているような気になってきた。その気持ちのまま、しどろもどろに話し始める。 「いや、だって・・・、普通は嘘って思うだろうし、・・・だから・・・」 「嘘なの?」 「嘘じゃないけど・・・」 「じゃあ問題ないよ」 問題はあると思うが、本人が良いと言っているのだから真那は何も言えなくなった。 青年はパスタを手に取り、クルクルと麺を絡めて食べ始めた。 しばらくそのまま無言の状態が続いたが、青年は真那をチラッと見て聞く。 「食べる?」 「えっ?」 「残りあんまないけど・・・?」 そう言って青年はフォークで、今まで自分が食べていたパスタを示す。次から次へと不思議な事が起こりすぎて、真那は頭がボーっとしてきた。 「・・・食べます」 しばらく逡巡したが、真那はそう言った。 麺にたらこが絡まって湯気を立てているパスタは、最初から凄く魅力的に見えていた。食べさせてくれると言うなら、ありがたく頂こう。 その答えに、青年は頷き、再びドアの向こうに消えた。戻ってきた青年の手には、少なめだがおいしそうなパスタがあった。 「はい」 「ありがとう」 そして今度は2人で黙々とパスタを食べ始めた。
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