20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:九十九神 作者:華月

第7回   7
 驚いて固まる真那に対し、入ってきた青年も真那を見て固まった。
「何、あんた?」
「なに、って・・・」
「どうやって入ったの?」
 この会話にデジャヴを感じるなぁ、と真那は思った。そんな真那を見て、青年は聞く。
「泥棒じゃないよな?」
「違います」
 先程とは違い間髪入れずに答える。泥棒などと間違われるのは嫌だ。
 その答えにふ〜んと頷き、青年は小さな声で言う。
「じゃあ、お邪魔します」
 ここはあなたの部屋ですが。そう言おうとしたが、それは飲み込んだ。
 ベッドに座り、たぶん自分で作ったのであろうパスタを机の上に置き、青年は真那を振り返る。
「で、なんでここにいるの?」
「さぁ・・・?」
「はっ?」
「私も何でか・・・。気付いたらここに・・・」
 我ながら、なんて間抜けな答えだろう。そう後悔した真那だが、青年は驚くほど意外な答えを返した。
「そう」
「えっ?」
 驚いて声が裏返った真那に、青年も驚いた表情になる。
「何?」
「それだけ?」
「それだけって?」
 心底不思議そうに聞いてくる青年に、真那は自分が間違っている事を言っているような気になってきた。その気持ちのまま、しどろもどろに話し始める。
「いや、だって・・・、普通は嘘って思うだろうし、・・・だから・・・」
「嘘なの?」
「嘘じゃないけど・・・」
「じゃあ問題ないよ」
 問題はあると思うが、本人が良いと言っているのだから真那は何も言えなくなった。
 青年はパスタを手に取り、クルクルと麺を絡めて食べ始めた。
 しばらくそのまま無言の状態が続いたが、青年は真那をチラッと見て聞く。
「食べる?」
「えっ?」
「残りあんまないけど・・・?」
 そう言って青年はフォークで、今まで自分が食べていたパスタを示す。次から次へと不思議な事が起こりすぎて、真那は頭がボーっとしてきた。
「・・・食べます」
 しばらく逡巡したが、真那はそう言った。
 麺にたらこが絡まって湯気を立てているパスタは、最初から凄く魅力的に見えていた。食べさせてくれると言うなら、ありがたく頂こう。
 その答えに、青年は頷き、再びドアの向こうに消えた。戻ってきた青年の手には、少なめだがおいしそうなパスタがあった。
「はい」
「ありがとう」
 そして今度は2人で黙々とパスタを食べ始めた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 19