リビングに置いてあるソファにドカッと座り、青年は真那を振り返る。 「座りなよ」 だからここは自分の家だ、そう言いたいが、なんだか面倒くさくなってきた。真那は言われた通りもう一つのソファに座る。 「まずは、はじめまして」 そう言って青年は頭を下げる。つられて真那も頭をぺこりと下げる。 「こちらこそ」 「君の名前は、真那だよね。俺は、遠遣」 「とうや?」 「と・お・や」 一音一音はっきりと発音した遠遣は、真那の顔を見て首をかしげる。 「どうかしたか?」 「色々と・・・」 「ん?」 何と言っていいかわからず困っている真那に、遠遣はにこりと笑って真那の言葉を待つ。 本当に笑うと人懐っこい印象になるなぁ、などとぼんやりと思いながら、真那は口を開く。 「何で家に入れたの?」 色々聞きたい事はあったが、まず何よりこれが問題だ。一体どうやって入ったのだ。 遠遣の答えに構える真那は、返ってきた言葉に一気に力が抜けた。 「俺ねぇ、鍵掛かってても全然問題ないから。鍵掛かってたら、直接家の中に出るから」 「は?」 何を言ってるのかまったく理解できない。出るとはどういう事だ。 「どういう事?」 思っている事がそのまま言葉になった。 遠遣は真那が聞いてくる事の意味が分からず、キョトンとしている。 真那も何と言えばいいのか分からず、遠遣の顔を見ながら悩む。 しばらくその状態で沈黙が続いたが、遠遣は言葉を探すように少しずつ話し始めた。 「え〜っとね・・・、俺は真那が何に理解を示してないのかが分かんないんだけど、俺不法侵入以外になんか問題あった?」 「うん・・・」 いきなり呼び捨てなのが気になるが、不法侵入の自覚はあってよかった、と真那は思いつつ話し始める。 「どういう方法で家の中に入ったのかが気になったの。出たってどういう事?」 「あ、そっか。飛べないんだよね。ごめんごめん、忘れてた」 飛ぶ。また意味不明な単語が出てきた。 そんな真那の困惑が伝わったのか、遠遣はう〜んと頭を掻きながら考える。 真那は遠遣の答えを待つ。しかし遠遣は腕を組んで難しそうな顔をしたが、真那に向かって笑って言った。 「説明すんのも面倒くさいし、会わせたい奴もいるから、直に体験してみて」 「えっ?」 何か言う前に真那は自分の体が浮くのを感じた。 そして気がついた時、真那は見知らぬ部屋にいた。 「どこ、ここ?」 辺りを見渡すと、パソコンがあったり、雑誌が積んであったりするが、必要最低限の物しかない。簡素な部屋から、ここが男性の部屋である事が分かる。 「遠遣ー?」 不安になり、真那は遠遣の名前を繰り返す。しかし答えは返ってこない。 その時、その部屋のドアが開いて1人の青年が入ってきた。
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