それから数日後、真那が家に帰ると、玄関の鍵が開いていた。 「遠遣?」 「あ、おかえり」 リビングに入った真那は、まるで自分の家かのようにリラックスしてソファに座る遠遣を見つけた。 もうその光景に慣れてしまった真那は、着替えだけ済ませて再びリビングに戻ってきた。 「久しぶり」 「そうだね」 ソファに座りながら言った真那の言葉に、遠遣はニコニコと答える。 「今日も大輝の所?」 「そう」 「そこ以外には飛ばさないんだね」 「そこ以外?」 不思議そうにきいてくる遠遣に、真那はコクリと頷いた。 自分の今置かれている状況は、まるでRPGのようだと真那は思っていた。突然やって来る遠遣、そして大輝の所に飛ばされる。自分の勝手なイメージだが、こういう場合はいろんな所に飛ばされるのがRPGのセオリーではないだろうか。 「大輝の所以外には飛ばされることはないの?」 「ないよ」 真那の質問に遠遣はそう答える。そして、そして真那の疑問が伝わったのだろうか、こう続けた。 「今の真那に大事なのは、大輝の所に飛ばされるのに慣れてもらう事なんだ。大輝の側にいる事に慣れてもらう事が、今一番重要なんだ」 「そう、なんだ」 どうして大輝の所に飛ばされるのかは分かったが。何故大輝なのかは結局分からないままだな、と真那は思ったが、遠遣の口ぶりから察するに答えは教えてくれそうにはない。 真那が納得したのを見ると、遠遣はすっと立ち上がった。 「じゃあ、飛ばすよ」 「うん」 唐突にそう言われても真那はもう困惑しなかった。遠遣が言っていたが、真那はもう大輝の所に飛ばされる事には慣れていた。 そして遠遣が手かざすのを見ながら、ゆっくりと目を閉じた。
「お、久しぶり」 「どうも」 目を開けた時、真那の後ろから声がした。 大輝も急に現れる真那に驚きはなくなったらしい。のんびりした声に、真那ものんびりと答えながら後ろを向いた。 そこにいたのはスウェットで、首からタオルをかけた姿の大輝だった。髪が少し濡れていて、肌もいつもより上気している。ちょうど風呂から出た所なのだろう。 「ナイスタイミング」 「みたいだね」 やはり風呂に入っていたらしく、大輝は先ほどと同じようなテンションでそう言った。
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