「どこでお昼食べようか?」 「う〜ん・・・」 カラオケの後、通りを歩きながらのんびりと話していた真那達の横を、パトカーが通り過ぎていった。 そのパトカーを見て、恵理香が思い出したようにぱっとこちらを向く。 「ねぇ、また面白い話見つけたの!」 「え〜、また怖い話〜?やだ〜」 嬉しそうに話そうとした恵理香に、怖い話が大嫌いな亜希は嫌そうな顔をする。 「怖くないから!」 「本当?」 恵理香も亜希が怖い話を嫌いな事は知っている。わざわざするとは思わないが、真那は一応恵理香に確認する。 そんな真那の言葉に、恵理香は自信満々に答える。 「本当に!ちょっと不思議なだけ」 その言葉に、亜希も「じゃあ」と了承した。 恵理香は嬉しそうに話し始めた。 「あのね、本物の110番、っていう話でね、どこかは分からないんだけど、本当にあった話なんだって」 タイトルだけ聞くと、怖いのではないかと真那は思った。同じ考えだったのだろう、亜希が真那の服を掴んだ。 「ある日、警察に物凄い数の110番がかかって来たんだって。内容はみんな同じで『ある場所で、凄く大きな音がした。そこは普段は立ち入り禁止の土地で、倉庫がいっぱい並んでいる所だから何かあったのかもしれない。でも、荷物が崩れたとかそんな音じゃなくて、絶対何か大きな物が壊れた音だから、確認してくれ』って内容だったんだって。それが何十件も来るから、警察も本当なんだって信じて、現場に向かったんだって。でも、隅から隅まで見ても、どこにも異常はなかったんだって。念のため、次の日その倉庫の持ち主の会社の人と一緒に倉庫の中を確認しても、何にもおかしな所はなかったんだって。ねっ、不思議でしょ!」 一気に話しきった恵理香に感心しつつも、真那はもしかして、と疑念を抱いた。 あの日、化け物に襲われそうになったのは周りが倉庫だらけの場所だった。何もなかったというのは、遠遣があの化け物を片付けてくれたからではないのだろうか、と。 しかし恵理香の話では、普段は立ち入り禁止になっているというのだから、自分が入れるはずがない。 そんな事を真那が考えているなど知らない2人は、早めに夕食を済ませようと、どこに行こうか話し始めた。亜希の様子を見るに、最初は不安がっていたが、本当に怖くなかったのだろう。いつもと何も変わらない。 その事にほっとした真那は、まぁいいか、と結論づけて2人の会話に混ざった。
|
|