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作品名:九十九神 作者:華月

第2回   2
 真那はそう呟きながらも身支度を整え、玄関へと向かった。
「行ってき〜ます」
 そう言うと、鍵を掛け駅に向かって歩き始めた。
 駅に着くと、すでに親友の百瀬恵理香がいた。
「やっほ〜」
「ども〜。珍しく早いね」
「珍しくは余計。今日お兄ちゃんが出かけるって言うから、駅まで乗せてもらった」
「あ、それで〜」
 納得、という顔をして、真那はバッグから定期を出す。
「じゃ、行こうか」
「うん」
 今日は学校が休みなので、2人で遊ぶ約束をしていた。行き先はいつも駅3つ分先の市の中心街だ。
 ビルにデパート、カラオケ店も充実している街は、休日ともなると人であふれる。しかしそこが2人は落ち着くのだ。
「今日どこ行く?」
 電車に揺られながら、恵理香はそう聞いてきた。
 一度う〜んとうなってから、真那はあっと提案する。
「『ル・シエル』行かない?」
 その言葉に、恵理香はぱっと笑顔になる。
「行きたい行きたい!」
 思わずそう大声を出してしまい、すぐに電車の中だということを思い出し、チラッと回り見て少し恥ずかしそうに笑う。
 一緒になって笑う真那に、今度はこっそりと話しかける。
「いいじゃん、行こうよ。最近行ってなかったもんね」
「ね。久しぶりに青木さんにも会いたいでしょ?」
 からかうように言う真那に、今度は声を出さずに手で突っ込むようなジェスチャーをした恵理香に、真那もごめんとジェスチャーで返す。
 駅から出ると、2人はすぐに裏通りへと向かった。
 駅のすぐ横にあるのに、裏通りのせいか人が減った通りの中に、『ル・シエル』という店はある。
 白い壁と柱、店内のインテリアも白い物でこだわっている。
「ドアを開ければ、ベルがチリンチリンと鳴る。
「いらっしゃいませ〜」
 妙に間延びした声とともに、金髪の店員が2人を出迎える。
「こんにちは、青木さん」
「お久しぶりです」
「どうも〜」
 すでに青木と顔なじみの2人は、青木に「いつもの」と伝えると、さっさと自分達の定位置へと向かった。
 店の奥にあり、カウンターと壁に接している席は2人のお気に入りだ。
 カウンターには無精髭を生やした男が座っていた。
「マスター」
「お、2人共来たのか」
「はい、来ました」
 無精髭を生やしている姿はとてもカフェのマスターとは思えないが、彼がこの店のメニューからインテリアまで全てを取り仕切っている。
「はい、いつもの〜」
 にこにこと2人に紅茶を出す青木に、マスターが口を開く。
「おい、智紀。一応客なんだから、メニューの復唱ぐらいしろ」
「佐々木さん、一応は余計ですよ〜。一応は」
 慣れた風にマスターの言葉を返し、青木は他の客の元へと向かった。
「ったく」
「マスター、ガラ悪い」
 2人はくすくすと笑う。このおしゃれな空間でそれを感じさせないマスターと青木の雰囲気が2人は好きなのだ。
チリンチリン
「いらっしゃいま、せ〜」
 だんだん声が小さくなった青木の声に、3人は入り口を振り向いた。
 入ってきた人物を見て、3人は驚いた。


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