真那は大輝のもとに走り寄った。 「これ、さっきまで動いてたの」 「え?」 「これに襲われそうになって、逃げたの」 「大丈夫だったか?!」 襲われたという単語に、大輝はバッと真那の顔を見て聞く。 「うん・・・」 真那の言葉と、見た目に怪我がないようだと判断した大輝は、安心して大きく息を吐き出す。 「ありがとう。探してくれて」 「探すに決まってんじゃん。急に走って行ったんだから・・・」 「ごめん・・・」 大輝に言われた言葉に、真那は素直に謝った。これほど心配させてしまった事が本当に申し訳なかった。 なぜここまであの言葉に反応してしまったのか、真那はますます分からなくなった。 そんな事を思っていたら、真那の耳に遠遣の声が響いた。 「真那。今すぐそこから離れろ」 「遠遣、・・・どうして?」 真那が急に声を出した事で、大輝は一瞬驚いた顔をしたが、遠遣の名前を聞いて、また彼が真那に話し掛けているのだと分かり、成り行きを見守る事にした。 「もうすぐ警察が来る。さっきまでの音に反応した住人が、通報したらしい」 「嘘?!」 「今逃げれば、大丈夫だから早く」 「う、うん・・・。でも、この化け物・・・?」 ここに残すわけにはいかない。そう思い、言葉を続けようとした真那に遠遣は力強く言った。 「俺に任せろ」 「でも、大丈夫なの・・・?」 警察に何と言えばいいのかは分からない。できれば会いたくなどはないが、真那は遠遣の言葉に不安そうな声を漏らす。 そんな真那の耳に、微かに笑っているような遠遣の声が聞こえた。 「大丈夫。俺を信じて」 「う、うん・・・」 「遠遣さんって人は何て?」 今までは静かに成り行きを見守っていた大輝だが、真那がずっと不安そうな声を出しているため、心配になって話しかけた。 真那は遠遣が言った事をそのまま大輝に告げる。 大輝は真那と同じように警察という単語に一瞬嫌そうな顔をした。そして、迷っている真那に告げた。 「出来れば警察には関わりたくないし、大丈夫って言ってくれているなら、信じていいと思う。安全なんだろ、遠遣さんは?」 「うん」 「大丈夫だ。真那、信じて」 2人からそう言われては、真那に異論はなかった。 「遠遣、お願いね」 「お願いします」 2人は何もない空間を見上げてそう言って、急いでその場から走り去った。
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