真那の目の前には、機械があった。しかもその機械には、人がくっついていた。真那にはそう思えた。 まるで、人の上半身に機械を下半身として取り付けたような形の機械。いや、人なのか。 「肉、食べたい・・・」 機械がそういった瞬間、真那の頭の中で混乱していた思考が一つの単語に辿り着いた。 化け物。 「いやぁああああああ!」 そう思った瞬間、真那はその化け物から逃げ出した。
「先輩、何してるんですか?」 違和感がありすぎる、と山下は思った。 自分が尊敬する先輩である近藤は、現場を走り回るのが似合っている。こんな風に、図書室でパソコンに向かって何かを調べる姿は想像できない。 「お前、あの男が言った事を覚えているか?」 「あの、マントの男ですよね?」 パソコンとにらみ合いをしていた近藤は、山下に振り向きながら聞いた。山下はあの男という単語に、すぐに反応した。 山下の答えに、近藤は真剣な表情で頷いた。 「あいつの言ってた事が、気になってな」 「何でしたっけ、つき・・・、つく・・・?」 「九十九神だ」 「つくも?」 「九十九神」 何度聞いても理解できない山下に、近藤は顎でパソコンを示す。 山下がパソコンを覗き込むと、そこには琵琶や食器に手足が生えたものが何十個も群れになっている絵があった。 「何ですか、これ?」 「九十九神っていう物らしい」 「これが?」 不審げに聞く山下に、近藤はパソコンの横にあった資料を見ながら説明し始めた。
「何あれ?!」 自分を追ってきている化け物から身を隠しながら、真那は思わず呟く。 その時、後ろで足音がした。倉庫の影から伺うと、あの化け物が迫ってきていた。 「ヤバッ!」 化け物に気付かれないように、真那はこっそりと移動しようとした。 しかし、角を曲がった瞬間、真那は自分の目を疑った。 「肉、食べたい・・・」 目の前に化け物がいた。先程まで反対側にいたはずなのに。 「あ・・・、」 真那は恐怖で声も出なくなった。足がガクガクと震えている。 「お前の肉、おくれ」 化け物がズルッと真那に向かって来る。しかし、恐怖とパニックで真那は動けない。 その時、真那の耳に新たな声が聞こえた。 『こちらへ!』 その声に、真那の体の呪縛が解けた。真那は目の前の化け物から逃げるように、声のする方へと駆け出した。 「待て!」 『こちらです!』 また化け物がいるかもしれないのに何故走っているのか、真那には分からなかった。 しかし、今度は大丈夫だという確信が真那にはあった。この声の主は安全だ、と心の中で何かが言う。 「どこ?!」 『そこを曲がって!』 言われたとおり角を曲がろうとした瞬間、真那は体に衝撃が走った。 「きゃあ!」
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